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LINE DAY

【LINEヘルスケア】ユーザーと医療をつなぐ医療プラットフォームの可能性

2020910日に行われたLINE Business ConferenceLINE DAY 2020 ―Tomorrow's New Normal―」。そこでは、これからのパラダイムシフトに向けた、我々のチャレンジを10のセッションでご紹介しました。

今回は、その中の「New Normal×Healthcare」セッションにて、オンライン診療「LINEドクター」を発表した、室山真一郎にLINEヘルスケアの事業戦略の背景や狙いを聞きました。

  • 室山 真一郎

  • LINEヘルスケア 代表取締役社長1973年生まれ。

  • 1995年同志社大学経済学部を卒業後、住友海上火災保険株式会社(現三井住友海上火災保険株式会社)入社。

  • 2003年に株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ(東証一部:4331)へ。ウェディングプランナーからキャリアをスタートし、エリアマネージャー、および複数の子会社の代表取締役としての事業立ち上げやターンアラウンドを経て2009年から同社取締役。

  • 経営企画及び財務を統括するCFOを務めた後に2010年から同社の海外進出に伴ない上海に赴任。上海を始め、深圳、香港、台湾、インドネシアにおける事業立ち上げを主導するとともに各社の代表取締役/取締役を歴任。

  • 2014年3月に同社取締役を退任し同年4月からアマゾンジャパン株式会社へ。同社ハードライン事業本部総合家電事業統括として6つの事業部を統括した後、2017年3月より現職。

  • 日・英・中のトライリンガル。趣味はテニス、スキー、ゴルフ。14歳を筆頭に子ども3人、犬1頭。

ヘルスケアはLINEと相性がいい

――そもそも、LINEがヘルスケア領域に参入した理由は何でしょうか。

LINEは「Life on LINE」というビジョンを掲げて、ユーザーの生活すべての局面において、私たちができること、解決できることを届けてようとしています。その中でも、ヘルスケアは非常にLINEと相性が良いと感じています。

なぜなら、医療というのは万人に必要なもの。どんな方でも、人生の中で必ずメディカルサービスにはお世話になりますよね。8400万人のユーザー規模を持っているLINEには、その点でプラットフォームとして圧倒的な強みがあります。

さらに、機能面でいうと、8400万人が「11」でコミュニケーションできるツールであることもLINEの強みです。医療というのは、11のコミュニケーションが必須ですので。

もうひとつ、24時間いざという時、いつでも使えるというのも強みです。医療に関するサービスを使いたいのは、非常時じゃないですか。具合が悪いときに、アプリをダウンロードして、登録して......は大変な作業です。

いざという時だからこそ、日常から触れているツールのほうがいい。その意味でLINEには優位性がある。だから参入を決意しました。

「健康相談サービス」で見えてきたこと

――LINEヘルスケアは201912月から、「健康相談サービス」の提供を開始しています。累計相談リクエスト数は30万件を超えているとのことですが、知見や見えてきた課題などはありますか。

「健康相談サービス」は、オンライン診療の前段階として開始しました。診療行為でも治療行為でもない、薬の処方も伴わない専門医への健康相談が、一体どこまでユーザーに使ってもらえるのだろう?と読み切れないところはありましたが、結果として想定を遥に凌ぐ勢いで使っていただいています。

LINEヘルスケアが提供している、健康相談サービスの画面(9月末まで無償)

新型コロナウイルス関連の相談が増えた時期もありましたが、現在ではそれ以外の相談割合が高まっていますね。

対応されている医師の方からも、「まさに、こういうことをやっていかなければと思っていた」「医療はこっちに向かうべき」という声が、思っていた以上に多かったですね。

――健康相談サービスのプラットフォームとしての立ち位置など、どのように考えていますか?

プラットフォーム上でユーザーと医師をつないでいる仕組み上、我々が完全に医師の行動をコントロールすることは難しいかもしれません。

しかし、対応いただいている医師とユーザーにおいて、不適切なやりとりが起こりにくいプラットフォームにするための防止策・改善策を講じるのは、我々の絶対的な責任だと考えています。

安心・安全・信頼はLINEヘルスケアの骨格ですから、ユーザーに不安を抱えたまま使ってもらうわけにはいかない。ひとつの染みもなく、ピカピカに、真っ白に磨き上げていかなければいけないと思っています。

もちろん、通信の秘密やプライバシーの問題には、慎重であらねばなりません。その上で、現在提供している健康相談サービスにおいては、不適切な単語の検知などテクノロジーを使ったモニタリングの強化の面で、プロセス上の改善を織り込んでいきます。

社会にはエラーが潜んでいるということを前提に、そのエラーを是正できる方向にテクノロジーを使い、過ごしやすい社会に変えていくのが大事なことだと考えています。

満を持して参入するオンライン診療「LINEドクター」

――2020410日から、オンライン診療が解禁され、同年11月からはLINEのオンライン診療サービス「LINEドクター」がローンチしますね。

20年以上も議論されてきて、ほぼ前進することのなかったオンライン診療の世界が、ようやく開こうとしています。ここがまさにスタート地点である、という認識です。

――オンライン診療はその議論の途上、対面診療ではないのに適切な診察ができるのか?という懸念が過去に幾度も唱えられてきました。

診察がすべてオンラインで完結できるのかという問いに対しては、「もちろん、 オンラインだけでは完結しないこともたくさんありますよね」というのが我々の素直な思いです。

どこまでオンラインでやるかは、ガイドラインに基づきプロフェッショナルである医師の方がご判断されるものであると考えています。まずはオンラインで話を聞いて「これは対面で診た方がいい」と思われたら、医師の方から患者さんにそう促していただくべきであると考えています。

一方で、既に来院されたことある患者さんに対し、「お薬を出しておきますね」と伝える程度であれば、「オンライン診療で十分賄える」とご判断される医師の方もいらっしゃるでしょう。

――オンラインで誤診が増えるのでは、という懸念はどう見ますか。

まず我々は、診察行為を「オンラインorオフライン」の対立軸で捉えたことは一度もないんですよ。よく二項対立で語られてしまいますが、本質はそこじゃない。医師の質はオンライン、オフラインの問題ではありませんよね。

残念ながら、誤診や見過ごしといった「エラー」が世の中からなくなることはありません。

たとえば対面診療であっても、「(この時期にこういう症状が出たのであれば)風邪だと思われるので、お薬を飲んで数日間様子を見て、もし変わらないようだったらまた来てください。」のように、他の病気である可能性も含めて診断や経過観察される医師の方も多いですよね。

それはオンラインでも、同じだと思うんです。必要な検査や根拠もなく断言する医師がいるのだとしたら、それはオンラインかオフラインかの議論ではなく、単にその医師の提供する医療サービスの質の問題になるのでは、と。

オンライン診療は"拡張の手段"

――「LINEドクター」は、医師と患者をつなぐといった役割になるのでしょうか。

我々は医療サービスのインフラの一角を担う存在として、"拡張の手段"を提供している、という理解です。

――"拡張の手段"?

テクノロジーとは、すべてそういうものだと思います。インターネットや電子メールや検索は、個人から物理的、時間的、環境的な障壁を取り除き、世界にアクセスすることを可能にしました。

オンライン診療も同じです。病院に行きたいと思った時に、「遠くて行けない」「移動手段がなくて行けない」「時間がなくて行けない」。また現在であれば「人との接触を避けたい」という理由もあるかもしれません。そんな時の"拡張の手段"です。

お子さんが熱を出した、でも、もうひとりのお子さんが寝ているから、家に置いて病院に連れて行くわけにはいかない。そんな時、オンライン診療なら、家にいながらにして医師に診てもらえます。

――テクノロジーが個人の行動を拡張する手段になった、と。

はい。また医師の方だと、コロナ禍で患者さんが来なくなったクリニックの経営が厳しい、という話をよく聞きます。

オンライン診療は、「医療サービスを享受したいユーザー」と「医療サービスを提供したいプロである医師の方々」を繋ぐ手段になれる。これもひとつの"拡張"ですね。「オンライン診療がオフライン診療の患者を全て奪っていく」ということではありません。

人々の生活はどう変わるか

――「オンライン診療」をはじめとしたLINEヘルスケアの試みは、今後ユーザーの生活をどう変えていくでしょうか。

「かかりつけ医が、ずっとそばにいるような安心感」をもたらすと思います。

我々はオンライン診療だけで終わるつもりはないんです。オンラインで診療されても、必要な薬もオンラインで出なければ完結しません。

今は法的な規制がありますが、ゆくゆくは処方箋を電子的にやり取りし、患者の家まで薬を届けるところまで持っていきたい。もっと言えば、薬をきちんと最後まで飲み終えるケアまでしたいと考えています。

ただ、「薬を発送して翌日に届きます」ではまだ遅いので、処方薬を迅速に届けるネットワークをまさに今、我々が構築しようとしているところです。

さらに言うと、薬が届いて飲み切り、健康になって元の生活に戻りました、で終わりではありません。デイリーのコミュニケーションが必要です。

――普段からの健康管理ということですね。

はい。慢性的に疾患をお持ちの方は、必要な薬を常時服用したり、生活習慣を管理したりといったことも必要でしょう。病院に行くという「非日常」と、普段の生活という「日常」を、我々のサービスで連携させるわけです。

――それが「かかりつけ医が常に近くにいる状態」ということですね。

「いつでもお医者さんにかかることができる」、そんな心の安定がもたらされるはずです。

少しでも体の不安があればスマホで相談し、オンラインで解決しないことであれば病院に行く。処方された薬で治ったら、普段から健やかな生活を保つためのコミュニケーションを再開する。また何かあれば相談する。

我々のサービスによって、そんな循環が生まれると思っています。

ヘルスケア領域はNew Normalの代表格

――これからLINEヘルスケアで一緒に働く方へメッセージをお願いします。

オンライン診療をコアとしたヘルスケア領域は、コロナ禍を経た世界のNew Normalの代表格だと思っています。

この先コロナが収まったとしても、皆が皆、元通りの生活様式には戻らないだろうと思います。会社や学校もそうですし、レジャーなども、これまでとは別の価値観に代わっていくでしょう。不可逆な変化です。

その中で、今まで「オフラインであるべきだ」と信じてきたものは、新しい形に変えていかなければなりません。ヘルスケアはその代表例になります。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で時限的ではありますが、20年間開かなかったオンライン診療の扉が、一斉に開きました。

New Normalの代表格を作る仕事は、間違いなく素晴らしい体験になります。もちろん、ジョインしてくれる方に医療の知識があれば嬉しいですが、医療知識の有無はあまり重要ではありません。医療的な判断は、医師の方をはじめとする専門家にお願いすればいい。それよりは、ユーザーの目線に立ち、社会の大きな課題を解決しようという姿勢が大事です。

私はかれこれ足掛け3年、この事業に立ち上げから取り組んでいますが、私も以前の職歴で医療業界にいたことはありません。一貫しているのは、解くべき社会課題に取り組みたいという姿勢ですね。

ヘルスケア領域の中で、今までテクノロジーがあまりタッチしてこなかった部分に大きな課題があるのであれば、LINEという大きな力を使ってやるべきだろうと、そういう気持ちです。

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松永 理沙

PR室で社内広報をしています。2019年よりLINEに入社。スピーチやコピーライティング、PRなどの企業のブランド活動に携わってきました。休日は漫画、ゲームばかりで、長男・夫とインドアに過ごしてます。旅行も好きで、関東と中部圏のロープウェイは制覇しました。ダムも詳しいです。