LINEスタンプ事業の現在地とこれからの未来
LINEの中でも歴史が長く、既に大きなユーザー規模を持つようなサービス・事業にスポットを当て、いま担当者が感じている課題や今後の可能性、そのサービス・事業に携わることの面白さ、やりがいなどを聞いていく「Growth Story」。
今回は、LINEのコミュニケーションの代名詞としてリリース時からサービスを盛り上げてきたスタンプ事業について、それぞれの立場で事業を統括している3名(写真の上段から渡辺、下段左から小内、Ariel)に話を聞きました。
ーーそれぞれ自己紹介からお願いします。
渡辺
2010年にライブドアへ入社しました。その前はモバイルサイトの広告企画業務をしていたのですが、ライブドアには優秀なエンジニアが集まっていると聞き、そんな人たちと一緒に働くことで自分も高められるのでは、と思ったのが転職のきっかけです。
その後LINE(当時:NHN Japan)と経営統合となり2012年からLINEのスタンプ事業に携わっています。スタンプ事業にはメインの担当が3名規模のときから関わっていて、LINEの着せかえなど各種機能の立ち上げ、海外チームとの連携など色々行ってきました。現在はスタンプ事業を担当する執行役員を務めています。
小内
LINEでは2014年に派遣社員として働きはじめました。当時は、個人が自由にLINEスタンプを作って販売できるLINE Creators Marketの立ち上げや、スタンプの審査ツールの改善や運用に携わり、2015年には企画職として正式に入社することになりました。
その後もスタンプショップやLINE Creators Marketの関連プロダクトのグロース企画を中心に業務を行っています。現在はスタンプ企画チームとスタンプ運営チームのマネージャーを務めながら、作詞作曲などの音楽活動をしていることもあって、映像デザイン室の Production Designチームも兼務して動画やイベントのサウンド制作もしています。
Ariel
元々は台湾でEC企業などを担当するコンサルタントとして働いていました。その後、LINE Taiwanの立ち上げメンバーとして入社したのが2013年です。当時はまだ社員が7名程度でオフィスも無いような状態でしたが、モバイルのマーケットに携わりたいという想いが強く、これからのモバイルの未来を作っていけると感じたLINEに決めました。
当時はスタートアップだったので、セールス担当やオフィシャルアカウントのサービス担当をしたり、ビジネススケールを考えたりと様々な業務を経験し、2015年にLINEに異動するかたちで来日しました。現在はグローバルスタンプチームのマネージャーとしてグローバルスタンプビジネス運営とLINEスタンプ プレミアム関連の企画を担当しています。
思い描いている10%も、まだ実現できていない
ーーLINEのなかでは歴史が古いスタンプ事業ですが、現在どのようなフェーズにあるのでしょうか?今後の展望についても教えてください。
渡辺
大きく捉えると、2つの方向性があると思っています。1つは、まだまだスタンプはコミュニケーションツールとして機能していて、改善を通して進化させていけるところが沢山あるということです。一方で、これまでのスタンプとは異なる新しいコミュニケーションを作っていく必要性も最近では感じており、これがもう1つの方向性です。
まず前者の改善については、LINEスタンプはリリースからもう9年近く経っていて、機能として完成していると思われることが多いんです。ただ、そんなことは無くて、まだまだ改善が必要な部分がたくさんあります。
小内
本当にそうですね、入社した人もほぼ全員驚きます(笑)。まだこんなに課題あるんだと。
渡辺
はい(笑)。もちろんシステムやプロダクトはちゃんと形になっているし運用的にも問題はないんですが、例えばダウンロードできるスタンプパッケージは、800万ぐらいあって、これって膨大な量ですよね。
レコメンド機能があるものの、各ユーザーが偶発的に欲しいと思うスタンプに出会えるためには、システムもより良いかたちを探して、改善していく必要があります。
リリースして時間が経っているサービスや機能って、どうしても「こういうもの」と捉えがちなんですけど、どのプロダクトにもまだUI/UXの観点で改善すべきところが沢山あると思っています。
厳しい意見ですが、スタンプは思い描く未来の10%も実現できていないと執行役員同士で議論することもあるぐらいです。もちろんこれまでも改善業務で色々と頑張ってきていますが、それぐらい高い理想がありますし、実現できるポテンシャルをまだ秘めていると経営視点でも捉えているということです。
左:2012年4月リリース時のスタンプショップ 右:2020年10月現在のスタンプショップ
ーーLINEスタンプが思い描く未来とは?
渡辺
さきほどの話に通じますが、コミュニケーションとしてスタンプをもっと無意識的に使えるようにすることですね。ワンタップで感情に即したスタンプを送れるようにしたり、膨大なパッケージからユーザーにマッチしたスタンプに意図せず出会えるようにしたり。
コミュニケーションや感情をシステムで予測するのは難しいんですが、これからもっと強めていける部分だと思います。
ーーもう一方の新しいコミュニケーションについてはいかがでしょうか
渡辺
あくまで構想段階ですが、来年再来年はスタンプ以外のコミュニケーションを形にすることも考えていきたいですね。LINEが2011年に誕生してから、まもなく10周年という大きな節目を迎えます。
時代に応じてインターネット上でのコミュニケーションが常に移り変わってきたように、きっとそろそろLINEが提供するコミュニケーションが変化する必要性も出てくると思います。この10周年という節目のタイミングで、もう一度新しいコミュニケーションについて考えていきたいです。
Ariel
確かに、そういった変化を楽しむ姿勢とか新しいアクションを起こしていけるかどうかって、スタンプ事業に限らずLINE全体で大切にしている気がしますね。メンバー1人ひとりにも変化に対する意識の高さが求められているように思います。
渡辺
はい、スタンプ事業から新しいアクションを起こしていけるといいですね。
なぜ?を大切にする組織でありたい
ーー続いて、仕事をするうえでスタンプ事業のみなさんが大切にしていることを教えてください。
小内
最近、開発してリリースするまでのスピードがすごく上がったんです。というのも、関連するメンバーがここ数年で増えてきたので、リソースは増えた一方でコミュニケーションの減少や摩擦が起こりやすくなっていて、そういったことを去年あたりから改善してきました。
開発でいうと、これまでウォーターフォール型で進めていましたが、社内のLean& Agileチームのメンバーを招いてスクラム開発を取り入れたプロジェクトもあります。開発に限らず、チームやプロジェクトメンバーとどうコミュニケーションを取っていくかは事業部全体で心がけていると思います。
Ariel
私もプロジェクトメンバー内で目標を共有したり、細かくやり取りしていくことは大切にしています。
例えば私は定額で700万種類以上のスタンプが使い放題になる「LINEスタンプ プレミアム」のサービス立ち上げと運用を担当していますが、関係者には売上を立てるためのビジネス側のメンバーも多くて、企画や開発側とどうやって同じ目標を持つのかというのは難しいポイントでした。
メンバーを集めてワークショップでプロジェクトの目標をすり合わせたり、議論していくうちに実現したいことが明確になっていきました。
小内
スタンプ プレミアムは今すごく成長してますけど、そういうコミュニケーションを重視してたんですね。
Ariel
そうですね、有り難いことに成長速度は予想より早く、今月の売上は前年比867%を超えました。何か特別なことをしたというよりはメンバー間で議論しながら、それぞれの強みを生かして達成した感覚が強いですね。
市場調査やデータインサイトをもとにUI改善をして、その次は知名度を上げるために無料体験キャンペーンを行ったり。メンバー同士でアイデアを交換しながら細かくPDCAを繰り返していきました。職種や部署を超えてオープンに意見を出し合えたのは大きかったと思います。
小内
インセプションデッキを作って相談しあったり、何故その仕事をやるのかといったメンバー間の議論も増えてましたね。
渡辺
確かに、今2人の話を聞いていて普段組織づくりで心がけているのは、メンバーが「なぜ」それをやるのかを考えられるようにすることなんだなと思いました。1人ひとりが自発的に考えて動ける環境が理想ですね。
これまでトップダウンで業務をおろしたり、おろされること(笑)も多かったんですが、それだとモチベーションも上がらないしメンバーの成長を考えてもあまり良くないなと思い、数年前から変えてきました。なぜその業務をやるのか?を説明できると、デザイナーやエンジニアからの協力も得やすいですし、プロジェクトの必要性やタスクの優先順位が分かりやすくなります。
Ariel
あとはコロナ禍でリモートワークが続いてるので意識的に雑談したり相談したりする時間を作るようになりました。オープンコミュニケーションが大事だと思います。
渡辺
お互いに顔を合わせない状況が続いたりと、環境やルールが変化するなかでオープンに相談できる関係性や、環境に流されず自発的に考えて自走する力がより必要になっていると感じますね。マネージャーとしてもそういう組織づくりは意識していきたいです。
ーースタンプ事業部ならではの組織の特徴って、どんなところでしょうか。
渡辺
ボトムアップを大切にしてるので、メンバーがスキルアップするための研修や教育には力を入れてますね。例えばLINEには行動指針のひとつに「Always Data-driven」という言葉があって、どんな職種でも数字やデータを扱う素養は必要となるので、全員にデータ研修を受けてもらったり、SQLを学びたい人は任意で土日などにオンライン研修を受けられるようにしています。
あとはコロナ禍でリモート勤務になってからは横のつながりが無くなるので、ストレングスファインダーなどの性格診断の結果をメンバー間で共有しあったり、コミュニケーション量を増やせるように心がけてます。
ーースタンプ事業に携わっていて面白いと感じる瞬間はどんな時ですか?
小内
LINE=スタンプというイメージはいまだに強くて、多くのLINEユーザーに認知・利用してもらっているのを日々体感します。例えば新しい機能をリリースすると、ダイレクトに大きな反応が返ってくるのはやはりやりがいに繋がりますね。
あとは、事業部内はスタンプのプロダクト自体を愛しているメンバーが多くて、LINEスタンプを更に良くしていきたいという想いでみんなで新しい意見やアイデアをぶつけ合うことも多いです。そういった議論は刺激的ですし楽しいですね。
Ariel
私が所属してるグローバルスタンプチームでは、様々な国のメンバーと話す機会が多いので、文化の違いを体感できるのが面白いです。各国で人気のあるコンテンツを共有しあって好みの違いを知ったり、日本では問題ないスタンプでも、国によっては宗教上の理由でNGになることもあったりと、スタンプというビジネスを通して多様性を日々感じます。
また、スタンプがあることでクリエイターの仕事も創出できるのも社会的意義があると思っています。例えば元々台湾の社会ではクリエイターの地位があまり高くありませんでしたが、LINEスタンプやITサービスの台頭でクリエイターが活躍する場が増えたことで、クリエイターが憧れられる存在に変わってきています。まだまだこのビジネスは、そうやって社会に影響を与えるポテンシャルを秘めていると思いますね。
ユーザー目線を持った"愛のあるクレーマー"であってほしい
ーー今後スタンプ事業としてやっていきたいことはありますか?現在課題に感じていることもふまえて教えてください。
小内
渡辺さんの繰り返しになってしまいますが、スタンプは現在1000万パッケージほど配信されており、コミュニケーションのためのコンテンツの供給量・充実度では数あるサービスやアプリのなかで、LINEが世界のトップの中に入るのではと思います。
その膨大なコンテンツをもっと活用するためにパーソナライズしていくことが現在の課題であり、今後やっていくべきことですね。既に考えているところだと、ユーザーごとにパーソナライズされたスタンプショップや、LINEでのトーク中に最適なスタンプを使いたいタイミングで簡単に見つけて送れる機能などです。既に何度か改善してきているものの、もっと進化させていきたいと考えています。
Ariel
スタンプのプロダクトの一番の特徴はテキストより感情表現が豊かなことだと思います。メールでは絵文字も一切使わないような方でも、LINEではスタンプを使うことでその時々の感情や気持ちを伝えられます。
こういったトーク上のコミュニケーションにおいて、スタンプが役割を持ちつづけるためにはやはり小内さんが言うように、ユーザーが自分の気持ちに合ったスタンプをどうやって見つけて使うか、UXの質を高めていくことが次の重要なテーマになると思います。
ーーそういった施策を実行していくにあたり、スタンプ事業部に入ってきてほしいのはどんな方ですか?
小内
スタンプ事業のプロダクトはまだ課題が多いものの、長くやっているので既存のものを正解だと思いやすいんですよね。今の当たり前を当たり前と思わずに、例えるなら「愛のあるクレーマー」のような目線が必要だと思っています。アプリを使った際に「もっとこうしたらいいのに」という意見が色々思い浮かぶような方はすごく向いていると思いますね。課題に気づいて、変えていく動きができる方が理想です。
渡辺
社外の方々が思ってる以上に、LINEって施策を実行に移すプロセスがシンプルなんですよね。最初は思いつきだとしても、ユーザー目線でポジティブであればすぐに実行に移せる柔軟さがあります。この前も、6000万人に友だち登録されているLINE公式アカウントで、こういうメッセージ配信をしたら面白いんじゃないかと話して、その2時間後には実際に配信されていたりしました。自ら課題に気づいて実行していける人は活躍できると思います。
Ariel
私は事業やプロジェクトで重要視している3つの柱があります。それは、ビジネス、ユーザー、コンテンツパートナーの3つですが、グローバルスタンプチームではこの3つをバランス良く意識できる人が向いていると思います。
当然売上が立たないとビジネスとして成り立たないですし、売上を優先すると、ユーザーのことがおざなりになることもあります。加えてコンテンツパートナーであるクリエイターの方々にとって有益なプロダクトである必要があるので、データ分析などの数値もふまえ、柔軟性を持ってビジネス企画ができる方にぜひ入社してほしいですね。
渡辺
あと、スタンプのプロダクトバリューは「絵を使ってユーザーの感情を豊かにすること」です。テキストメッセージでは正確性が求められる一方で、スタンプは絵を使ってユーザーの喜怒哀楽をよりリッチにすることができるので、「右脳的」とも言えます。
つまり、前述したようなデータ分析による左脳部分と、ユーザーの喜怒哀楽に寄り添うような右脳部分を上手に行き来できる人が活躍できる重要な要素だと思います。
ーー最後に入社を検討している方へのメッセージをお願いします。
渡辺
スタンプ事業はコロナ禍での需要が再び拡大していて、送信数が120%上昇し現在も高止まりしている状況です。社会環境が変わるなかでも、コミュニケーションツールとしてスタンプの需要はまだまだ高く、ビジネスチャンスがあると思っています。
一方で改善すべきことも多いので、現状に満足せず新たなアイデアを生み出してくださる方からのご応募をお待ちしています。
小内
自身の目指すゴールへ周囲を巻き込みながら一緒に推進していけるような、パワフルな方を歓迎しています。
Ariel
スタンプは複数の国に展開していますので、Open mindedや柔軟性、理性判断をもちながら、プロジェクトを推進し周囲と達成感を共有できる人を歓迎します。