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LINEでは、こうしてます。

LINEのプロジェクトマネジメントに関する社内トレーニングをご紹介します!

LINEでは、全社イベントだけでなく、各部署・個人主催の社内イベントや勉強会が多く開催されています。今回は、Effective Team and Delivery室が開催したプロジェクトマネージャー向け社内トレーニングのレポートをお届けします。

主催であるEffective Team and Delivery室は、一言でいうと「LINEを支えるプロジェクトマネジメント&アジャイルの専門家組織」。LINEの組織横断的にプロダクト開発やプロジェクトのプロセス改善、またチームづくりのコンサルティングやサポートに取り組むチームです。

さらに、Effective Team and Delivery室は2つのチームに分かれ、AgileやLeanの考え方に基づいて組織/チームづくりや人の課題を中心にサポートをするLean & Agile Teamと、プロジェクトマネジメントの知識を基にプロジェクトの進行や課題解決をサポートするDelivery Management Teamがあります。

Effective Team and Delivery室の取り組みとして、自由参加型の社内トレーニングを毎年2回ほど開催するほか、実際に組織の中に入ってチームスクラムのトレーニングを行ったり、プロジェクトマネージャーの役割としてプロジェクトに参画したりと、現場に入り課題を解決していく実践的なサポートも行っています。

(参考)LINEを支えるプロジェクトマネジメント&アジャイルの専門家組織「Effective Team and Delivery室」の取り組みと戦略

https://logmi.jp/tech/articles/322286

2020 Summer Project Management Training

その中でも、今回お届けするのは、プロジェクトマネジメントの基礎知識や実践的な事例を紹介する社内トレーニング「2020 Summer Project Management Training」。

中には、実際にプロジェクトマネジメントに携わっているLINE社員から、自身の課題をどう解決すべきか、トレーナーがその場で解決方法を答えるプログラムも。

ロジェクトマネジメントに携わるLINE社員がすぐにでも実践できる幅広いプログラムが準備され、全3日間で延べ719名が参加しました。

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トレーニング初日は、プロジェクトマネジメントに関する基礎的な知識についての紹介から始まり、続いてハンズオン形式での「リスクマネジメント」トレーニングが展開されました。

2日目は、プロジェクトを振り返るレトロスペクティブ(Retrospective)の実践方法や、Lean/Agileの基本概念について紹介されました。

最終日の3日目は、プロジェクトを可視化(ビジュアライゼーションVisualization)する事例や、バグトラッキングシステム(JIRA)の活用方法について共有されました。

本記事では、各日より、「リスクマネジメント」、「レトロスペクティブ」、そして「ビジュアライゼーション」について、トレーニング中に寄せられた社員からの質問とその回答も含めて、お届けします。

チームで考える「リスクマネジメント」

「リスク」という言葉。みなさんの普段の生活でも、何気なく「危険」という意味で使っているかもしれません。ですが、実は良いことと悪いこと、どちらも含め、これから起こるかもしれない不確実なことを「リスク」と呼ぶのだそうです。

では、このリスクをマネジメントするとはどういうことでしょうか?このトレーニングは、Delivery Management2 Teamの竹内が担当しました。

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Effective Team and Delivery室Delivery Management 2 Team の竹内。Technical Project Managerの他、ScrumMasterとして社内の開発プロジェクトを支援している。

トレーニングでは、「リスク登録簿(Risk Register)」を作るハンズオンアクティビティを通して、リスクマネジメントを実際に体験することができました。このアクティビティでは、以下3つのステップが紹介されました。

  1. リスクの特定ソフトウェア開発で起こりがちな問題が多数提示され、その中からリスクを特定してリストアップします。この時、既に起きている課題(イシュー)との分類がキーポイントとなります。
  2. リスクの評価特定したそれぞれのリスクを、High/Medium/Lowの3段階で評価します。今回は、起こる可能性と、起きたときの影響という2軸によるマトリクス評価が紹介されていました。
  3. リスク対応方法の決定リスク評価を考慮しながら、対応方法を決めます。ここでは「回避」や「軽減」といった形で定型化された対応の種類と、対応方法の詳細を決定します。

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「リスク = 危険」というイメージから、リスクは全て回避すべきものと考えられがちですが、「回避」ではく発生する可能性や影響を抑える「軽減」、あるいはリスクを認識した上で、あえて受け入れる「受容」といった考え方もリスクマネジメントでは有用です。

ここでは、受講したLINE社員からの質疑応答を一部ご紹介します。

ーーリスク登録簿の作成やリスクマネジメントはいつ、誰が行うべきものでしょうか。小さいプロジェクトではプロジェクトマネージャーがいない場合もあります。

竹内

リスクはとても広い範囲で存在します。例えばビジネス上のリスクもありますし、法務上のリスクもあります。加えて、もちろん技術的なリスクもあります。これらのリスクを誰か1人が全て特定することは到底できません。ですので、プロジェクトに関わるメンバー全員で行うことが重要です。

また、プロジェクト起ち上げ時からリスクマネジメントを実施しますが、日々変わる状況に応じて、リスクの追加や再評価を行っていくことも重要です。

ーーリスク評価の判断が難しいです。うまくやるコツはありますか?

竹内

リスク評価は主観的な要素が入りますので、絶対的な正解はありません。重要なのは、プロジェクトの中でリスクについての話をすることと、リスク評価の基準を合わせることです。

チームで良い成果を出すための「レトロスペクティブ」

続いて、「レトロスペクティブ」についてご紹介します。みなさんは、「レトロスペクティブ」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?レトロスペクティブとは、いわゆる「ふりかえり」です。

プロジェクト中や、プロジェクト完了後に、関係者全員で行ったりする場合もあれば、チームの仕事を1週間ごとに振り返るためにチームで行う場合、その日1日の仕事を一人で振り返って、次の日以降に生かすのもまた「ふりかえり」です。

今回のレトロスペクティブのトレーナーは、Lean & Agile Teamの鎌田が担当しました。

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トレーナーは、ソフトウェアデベロッパー/ エンジニアマネージャー/ VP of Engineeringとしてのバックグラウンドを持つ鎌田。Effective Team and Delivery室Lean & Agile Team マネージャーを務める。

チームでレトロスペクティブを実施する目的は、チームでより良い成果を出すことだと言われていますが、具体的に、以下の3つをポイントとして紹介されました

  1. 課題を把握すること
    そもそもチームの課題が何かを把握していないと、課題を解決できない。課題を正確に捉える事によって、その課題を解消するためのコストや解消された時のインパクトを考え、優先順位を検討することができる。
  2. 相互理解すること
    課題を場に出すことによって、マネージャーやメンバーの間でチームが抱えている課題の認識を揃えることができる。職位や職種が違うことで同じ状態を見ていても捉え方が違うことを知ることができる。
  3. 変化に適応すること
    メンバー構成やプロジェクトの優先順位、環境など、チーム内外の変化を把握し、現時点でのベストなやり方に変更していくために、定期的に振り返って形骸化している仕組みなどを検知する

レトロスペクティブを継続的に実施していきたいと思ったときに、どのくらいの頻度で実施するかのサイクルや、レトロスペクティブのフレームワークがあると取り組みやすくなります。

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本トレーニングでは、「KPTA」や「PMI」というフレームワークに沿って、個々が抱える課題をチームでどうやって共有し改善されていくのかを社内の事例を挙げながら説明されました。

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4つの観点である「Keep」、「Problem」、「Try」、「Action」の頭文字を取った、「KPTA(けぷた)」。

では、レトロスペクティブの実践編で寄せられた、LINE社員からの質疑応答を一部、ご紹介します。

――ふりかえりを行うときのファシリテーションのコツを教えてください。ファシリテーターの力量によって会議の充実度が左右され、参加者の意見を引き出すことが難しいと感じることがあります。

鎌田

まずは、会議の参加者が、会議の充実度をファシリテーター任せにしないことを意識したいですね。参加者全員で良い会議を作っていけると良いと思います。そのための具体的なステップとして、ファシリテーションをチームのメンバーで持ち回りで行うのはどうでしょうか?

それぞれがファシリテーターを体験することで、会議の参加者として、どのように振る舞うのがよいかを体験できます。チームで、そのふりかえりの場をどのように良くしていくかを考えるきっかけにもなります。

――ふりかえりを自分のチームや上長に提案・導入するコストに対して、それに見合ったリターンを得られるかが心配です。そのため、チームに話を切り出せずにいます。何か良い方法はありますか?

鎌田

まずは、「小さく始めてみること」をお勧めします。例えば、チーム内で話しやすい2~3人のメンバーに声をかけて15分でやってみるのも良いですし、1人で始めてみるというのもありです。

その時の内容やアイディアを記録しておき、何回か実施したことで出た改善案、実行した結果などをチームにオープンにして、「このような意見が出て、改善された」という実例で示せると、話を切り出しやすいかもしれません。

プロジェクトの方向と足並みを揃える「ビジュアライゼーション」

次に、3日目に行われたビジュアライゼーションについて、ご紹介します。トレーナーはDelivery Management 2 Teamの谷川が担当しました。

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Effective Team and Delivery室 Delivery Management 2 Team マネージャーの谷川。プロジェクトマネジメントの観点で社内の様々な組織における改善やサポートを担当。

ビジュアライゼーションとは、「視覚化、可視化、見える化」のことです。

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プロジェクトを「見える化」することで、プロジェクトメンバーが同じ目的意識やスケジュール意識を持って仕事に取り組めるだけではなく、タスクの見落としを未然に防ぎ、ステークホルダーの意思決定を促すことができます。

またプロジェクトが進行していく中で、プロジェクトマネージャーやメンバーは、「プロジェクト全体がちゃんと見えているか?」「これだけのタスクをやれば目的は達成できるのだろうか?」「相手のタスクは進行しているだろうか?」など、様々な不安を抱えます。

その不安を取り除いていくこと、これもビジュアライゼーションの役割となります。

見える化は、上司やスポンサーが管理したり安心したりするために行うもの、というイメージがあるかもしれませんが、プロジェクトがうまく進行するために、プロジェクトメンバー自身にとって必要なことです。システム開発のプロジェクトでは、最初に計画を練って、あとはメンバーがその通りに進めればうまくいくというケースは少ないです。

本トレーニングでは、6つのステップにそってビジュアライゼーションしていく方法が紹介されました。

  1. なぜ、プロジェクトをやるのか?を決める
  2. ゴールは何か?を決める
  3. メンバーの役割や責任範囲を決める
  4. 大まかなスケジュールとマイルストーン(チェックポイント)を決める
  5. WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)やTODOリストを作る
  6. タスクの依存関係、リスクやイシューの分析からアクションプランを決める

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ビジュアライゼーションのステップで大事なのは、将来のタスクをブレイクダウンした後に見えてくるリスクや依存関係を整理し、それらへの対応計画を立て、スケジュールに反映することです。これらの作業をプロジェクトマネージャー1人が行うのではなく、プロジェクト初期にメンバーとともに集中的に実施することで、「誰のために、何のために、それをすることでどんなアウトプットが出てくるのか、どのようにプロジェクトが良くなるのか」が明確化され、プロジェクトの不安が取り除かれていきます。

では、LINE社員からの質問とトレーナーの谷川からの返答を一部ご紹介します。

――プロジェクトのスタート段階で、ロードマップ、タスクリスト、リスク一覧を作っても、日々の業務に追われ、途中から更新されなくなり、放置されることが多いです。最新状態で維持していくのが大変ですが、メンテナンスのコストを下げたり、他の業務と両立したりするためのコツはありますか?

谷川

放置されるということは、管理されている状態を維持するメリットが管理コストに比べて小さいと思われているのかもしれません。その場合、メンバーと、見える化の作業がコストをかけた以上のメリットをもたらしているかを確認し、どの程度の見える化がコストとメリットのバランスが良いか」を話し合いいましょう。場合によっては、コストを下げるか、同じコストでメリットを増やすかの変化が必要です。見える化に必要なコストはプロジェクトマネージャーだけでなく、メンバー全員にかかるはずです。日々の業務の中で、メンバーは更新作業よりも優先して集中したいことがあるはずなので、「更新しておいてください」というアプローチではなく、「更新する時間をとりましょう」と30分だけでも場を設定するようにしてみてもいいかもしれません。

――低コストで始められて、カバーする領域が広いツールを知りたいです。どのツールから始めるのがいいでしょうか。また、ステークホルダーやタスクがさほど多くないプロジェクトの場合、どのようなものが最低限あると良いでしょうか。

谷川

コストで始められることとしては、「Kanban ボード」でタスクや問題、リスクとその状況を見える化することではないでしょうか。その他にも、「マイルストーン」とその「達成条件の一覧」で短期的な目標を見える化しながら進めるとプロジェクト推進の役に立ちます。


トレーニングを終えてプロジェクトマネジメントトレーニングについて、いかがでしたか?私個人が印象に残ったのは、初日の「プロジェクトマネジメントの基礎知識」セッションで共有された、テーラリング(Tailoring)という概念です。

プロジェクトの大事な一要素で、「プロジェクトをチームや組織の構成や文化にあわせて適用することが大事」という話でした。他のチームのやり方をただ単に真似してもだめ、ということですね。

改めて、プロジェクトというものを通じて、チームや組織の構成・文化を考え直すきっかけとなりました。レトロスペクティブやプロジェクトの可視化については、こちらでも一例を紹介していますので、ご興味あれば読んでみてくださいね。

https://engineering.linecorp.com/ja/blog/eof2019-report/

今回の記事を読んだみなさんにとっても、プロジェクトマネジメントの参考になれば嬉しいです。また次の機会に、Effective Team and Delivery室の取り組みをご紹介していきたいと思います!

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松永 理沙

PR室で社内広報をしています。2019年よりLINEに入社。スピーチやコピーライティング、PRなどの企業のブランド活動に携わってきました。休日は漫画、ゲームばかりで、長男・夫とインドアに過ごしてます。旅行も好きで、関東と中部圏のロープウェイは制覇しました。ダムも詳しいです。