OnLine

OnLINE
LINEでは、こうしてます。

この5年間で最もブランド力が上昇した企業のCSMOが考えるこれからのブランドとは?

企業、商品、サービス延べ1,500ブランドを、5万人以上の生活者とビジネス・パーソンが評価する日本のブランド価値評価調査「ブランド・ジャパン」。

2020年に開催された「ブランド・ジャパン20周年アワード」にて、最もブランド力が上昇した企業として、LINEが「ブランド・ジャパン2020 総合力上昇ランキング」第1位に選出されました。

今回は、本受賞を受けて、LINEのサービス開始以来、ブランディングやマーケティングをリードしてきた取締役CSMO舛田に、これからのLINEブランドについて語ってもらいました。

参考:Best Japan Brands 202152位受賞 ブランドリーダーズインタビュー

masuda3.jpg

  • 2008年10月にNAVER Japan株式会社(現:LINE株式会社)に入社、事業戦略室室長/チーフストラテジストとして従事。
    2012年1月、グループの経営統合に伴い、NHN Japan株式会社のNAVER・livedoor・LINEの事業戦略・マーケティング責任者として執行役員/CSMO(Chief Strategy & Marketing Officer)に就任。2013年4月、LINE株式会社に商号変更。引き続き、3ブランドの事業戦略・マーケティング責任者としてLINE株式会社執行役員CSMOを務め、2014年4月、LINE株式会社上級執行役員CSMOに就任。2015年4月には、取締役CSMOに就任し、現在に至る。

「ブランド」とは

−− 今回、最もブランド力が上昇した企業として受賞をいただきました。「ブランド」をどう考えているのか、お伺いさせてください。

この5年間で最も成長したブランドとしてご評価いただけたことは、本当に嬉しいことだと思っています。

「ブランド」というものは、カタチがあるわけでもなく、個々人での捉え方の違いもあり、その定義が非常に難しいものです。

私個人、またLINEとしては、ブランドは「事業やサービスそのもの」という考え方をしています。言い換えれば、ユーザーや顧客、ステークホルダーに対して、提供している体験、すべてがブランドともいえます。今回、LINEというサービスや事業、そして会社のこの5年間をみなさまにご評価いただいたとすれば、非常に意味のあるアワードをいただいたと思っています。

ブランドという言葉は、古くは、牛などの家畜へのマーク、焼印をつけることが語源だと言われていますが、これを今に置き換えると、「ユニークであること」「分けることができること」だと思っています。

このユニークさは、必ずしもロゴデザインなどのクリエイティブだけではありません。LINEサービスを使った時や、カスタマーサポートに問い合わせた時の対応にも感じられるものです。

何かしらの方法で、ユーザーにユニークだと思わせること。これが、「ブランドを体験する」ということだと考えています。

故に、ロゴやアイコン、様々なクリエイティブのブランド上での役割は、そのユニークなブランド体験を、ユーザーや顧客に「思い出せる」役割、言い換えれば、自分とブランドとの関係性における「信頼感」や「期待感」を想起させる役割と言えますね。

ブランディングの意味

−− ユーザーにユニークと思っていただいた体験が、「ブランド」らしさということですね。ブランド力を高めるブランディングについては、どう考えていますか。

社内で「新規プロダクトを出したから、ブランディングをしたい」と相談をもらうケースがあります。よくよく聞いてみると、「プロダクトの認知度や好意度をあげたいからブランディングしたい」ということだったりします。でも、認知度や好感度を上げることと、ブランディングというのは完全にイコールではありません。

もちろん認知度や好意度も必要なんですが、もっとも大事なのは、認知度や好感度の先にある、「サービスを選んでいただいて、体験していただいた時に、満足して評価してもらい、リピートして使い続けていただけるか」です。

これって、LINEがプロダクト作りで大事にしている価値観「WOW」と非常に近い観点なんですね。WOWがあるからこそ、LINEへの期待感や信頼感が生まれ、ユーザーに選んでいただけるサービスになります。だから、ブランディングという言葉を使っていなくても、LINEでWOWなサービスを目指す限り、企画段階から既にブランディングは始まってるんです。むしろ、始まっていないとおかしい。

だから、「LINE」と聞いたときに緑色のロゴを想起させるだけではなくて、その向こうにあるLINEサービスからの体験やストーリーも含めて想起していただくことが重要です。そのストーリーづくりがブランディングになるのだと考えています。そして、そのストーリーは企業からの一方通行のストーリーではなく、必ず、そのストーリーに、ユーザーが顧客自身のストーリーを重ね合わせていただけること、ご自身が主人公になったストーリーを想像していただけることが大事だと考えています。

※WOW...「ユーザーを感動させる初めての体験」であり、「思わず友だちに教えたくなるような驚き」のこと。

masuda_0688.jpg

カウンターとしてLINEブランドが生まれた

−− LINEというブランドのユニークネスとは何か、お伺いしたいです。

LINEは、2011年の3.11という悲劇の中で、親しい人同士でもコミュニケーションが断絶している状況をなんとか出来ないかという想いを背負って生まれてきたサービスです。それ故に、その他の単なるチャットツール、メッセンジャーとは異なり、「近しい人の距離を縮める」という特別な意味が付与されています。

まさしく、そのユニークネスが、LINEというサービスや会社を貫く背骨に今もなっています。

震災直後、我々は、LINEを生み出す過程において、「どんなユニークネスなのか」「どんなポジションなのか」、仲間たちと毎日多くの議論を重ねました。

インターネットの歴史的には、まずYahoo!があり、そしてGoogleがきて、FacebookやTwitterが台頭します。これらのユニークネスを考え、その関係性やストーリーを分析していったんですね。その結果、LINEは「それらのカウンターであろう」と考えたんです。

当時のインターネットは、ギークな方々に対してサービスを提供していました。そこで、我々は「今回のサービスは誰でも使えないといけない。断絶を解決するんだ。若年層とか女性とか、多くの方々に使っていただけるものを作らなければいけない。」となりました。当時のチャットサービスの特長だった、誰とでも繋がれることのカウンターとして、この社会背景の中だからこそ、あえて親しい人とだけ簡単に繋がれるようにしようと考えました。

「もっとも簡単に、親しい人と素早くコミュニケーションが取れること」をLINEのユニークなベネフィットとして、この体験を拡張させたのが、LINEの無料通話やスタンプ機能です。

「LINEだからやれることってあるよね」

−− 2011年にLINEが誕生してから10年を迎えます。LINEのブランドはどのように成長してきたのでしょうか。

LINEの組織としての強さは、社会の変化に対してボトムアップでサービスが提供されることにあります。

コロナ禍においても、多くのLINE社員たちから「私たちだからやれることってあるよね」「やらないといけないことあるよね」と声が上がり、ボトムアップで様々な施策を打ち出しました。実は、この社員の言葉って、3.11でLINEが生まれた時から変わっていないんです。

例えば、厚生労働省と一緒に進めた「新型コロナ対策のための全国調査」も、国民の多くの皆さんに使っていただいているコミュニケーションインフラとして、どうやってサポートできるかを考えて始まったプロジェクトです。

LINEでは、2016年から「CLOSING THE DISTANCE」をミッションとして掲げていますが、本質的なところでは、2011年からずっと変わっていません。先ほども申し上げたようにそれが「LINEの背骨」です。

LINEはずっと分断されたものの距離を縮めることを徹底しています。それは「人と人」の距離だけでなく、「お金と人」、「飲食と人」、「情報と人」などの距離も当てはまります。最近のキーワードである「DX」と同じ考え方です。

だから、例えば、コロナ禍では、飲食店とユーザーを近づけるサービス「LINEで予約」や、医療の距離を近づけるサービス「LINEドクター」をローンチしました。「CLOSING THE DISTANCE」を軸に、社会で生ずるペインポイントを解消することを徹底しているんです。

もし、LINEがチャットツールとして、親しい人の距離を近づけることだけにこだわり続けていたとしたら、おそらくブランドの成長は止まってしまっていたと思います。この柔軟な一貫性がLINEのブランドを作り上げ、強くしていったのだと思います。

masuda_0715.jpg

「心地よい距離」を作り、"当たり前"になり続ける

−− 強いブランドになるために、LINEはこの社会の中でどうあるべきでしょうか。

これからの社会を考えたときに、誰のために会社をやっているのか。教科書的にいえば株主ですね。でも私は、全ステークホルダー、もっと抽象化すると、社会のために価値を提供しているんだと思っています。

この点は、これまでのブランドや企業の在り方と、今後のブランドや企業の在り方の大きなシフトではないでしょうか。これからの時代は「社会のため」「全ステークホルダーのため」という目的を旗として掲げたほうが、圧倒的に企業やブランドは「強く」なると考えています。そして、ゴールを「社会のため」とすると、その企業やブランドをサポートしてくれる人、賛同してくれる人、ファンとなってくれる人が自然と増えてくるようにもなりますね。

LINEに言い換えると、インターネットの力を使って、社会や人々の生活をより豊かにすることがブランドの在り方。今までボトルネックになっていたものを、我々のサービスで解決していくことが、我々が社会に貢献できることです。

LINEはコミュニケーションのツールとして、社会のあらゆるものの距離を作る役割を担ってきましたが、ようやくいま、オンラインとオフラインの「最適な距離」を作ることができています。

これまで、オンラインとオフラインのサービスは全く別物だったので、ユーザー動向やニーズも分けて考えられていました。しかし今では、オフラインサービスがオンラインを活用するなど、オフラインとオンラインの分断がなくなってきています。この分断をなくすことで、ユーザーの生活はより良くなるはずです。

その中で、いまLINEでは、ユーザーの皆様に、「心地よい距離感」を作ろうとしています。人によって、それぞれに心地よいと感じる距離感は違うもの。心地よさがあるからこそ、ユーザーの生活にLINEサービスが自然に溶け込み、サービスを使い続けられる "当たり前"になることができます。

LINEはこれまで勝者であったことは一度もなく、WOWを作り続けるために試行錯誤するチャレンジャーです。これからの10年、社会へ大きなインパクトを与えるようなサービス、皆さんの生活をアップデートしていくサービスを一つでも多く生み出すことが、我々のやるべきことです。

「今日も、LINEからつながる」

−− 2021年は、LINEが生まれてから10周年です。10周年キャンペーン「今日も、LINEからつながる」に込めた想いを聞かせてください。

実は、このキャンペーンを実施するにも、「なぜ必要か?」ということは社内で議論を重ねました。

ここ数年は、LINEがチャットサービスから、スマートポータルへとサービスを展開するとともに、「お得だよ」というキャンペーンをよく打つようになったんですね。特に、決済だと「安い」「得」というキーワードが相性良くて。

こうしたメッセージを多く出す一方で、やはり、LINEの中心にあるブランドプロミスは、「人々を繋げてきた」という「CLOSING THE DISTANCE」にあるよね、と改めて認識しました。24時間365日、平常時も、コロナ禍のような非常時も、いつでもそばにいます、と。ユーザーは、楽しい時も、怒っている時も、LINEを通じたコミュニケーションをしているよね、と。「今日も、LINEからつながる」の言葉はその想いを込めています。

LINEは、ユーザーそれぞれに使われ方があり、8600万人のユーザーのうち、8600万人通りのストーリーが生まれています。決してみな同じではなく、それぞれにLINEを通じたストーリーがあるはずです。

このストーリーをLINEドラマとして映像化したのが、この「今日も、LINEからつながる」という取り組みです。コンセプトは、「LINEを通じて気持ちが動く時」。ドラマをみて、「あるある!」と共感いただけることもあれば、「私は違うな」と思うこともあるはずです。こうしてストーリーを言語化することで、サービス体験を再認識してもらい、ブランドの輪郭を鮮明にできたと思います。

これらの取り組みを通じて、LINEはこれからも変わらない価値を提供し続けること、LINEを通じたブランド体験はこれからも変わらないことが伝われば嬉しいです。

IMG_0809.jpg

*

松永 理沙

PR室で社内広報をしています。2019年よりLINEに入社。スピーチやコピーライティング、PRなどの企業のブランド活動に携わってきました。休日は漫画、ゲームばかりで、長男・夫とインドアに過ごしてます。旅行も好きで、関東と中部圏のロープウェイは制覇しました。ダムも詳しいです。