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LINEでは、こうしてます。
LINEのなかみ

人事部門のあらゆる課題に取り組むHRビジネスパートナーチームとは?

LINEで生まれる新しいアイデアやサービスを支える部門・チームを紹介する「LINEのなかみ」。今回は、LINEの様々なサービスの成長を人事や組織の面から戦略的に支える「HRビジネスパートナー(HRBP)チーム」の仕事をご紹介します。HRBP組織全体をマネジメントするPeople Partner室 副室長の大野と、チームマネージャーの小向に、組織の役割や仕事内容、LINEでHRBPを担う上での魅力を語ってもらいました。(写真左から小向、大野。)

ーー自己紹介をお願いします。

大野

新卒で不動産業界に入り事業から人事部立ち上げまでを経験した後、直近は外資系製薬会社でHRBPとして営業組織を担当していました。マネジメント中心のキャリアではありますが、経営や事業、人材開発・採用・労務・タレントマネジメントなどの人事の各領域での実務を一通り経験してきました。

LINEに入社した理由は、HRBP組織が立ち上げフェーズだったということ、また当時のマネージャーの想いやビジョンに深く共感したことです。当時言われたのが「会社としても事業としても成熟期を迎えたLINEにおいて、事業課題に向き合う組織リーダーに対し、人・組織の課題に向き合い、一緒に建て直す存在が必ず必要になる」ということ。そして、「その役割がHRの水先案内人となるHRBPであり、HRBPの組織は今後よりバリューを発揮して、組織の拡大とプレゼンスを高めていくべきだ」と言われ、今でも強く印象に残っていますね。

前職のHRBP組織はある程度成熟していため、自分なりのHRBPの形を作りづらく、またグローバル主体の考え方が強く変化が期待できなかったのですが、LINEでは期待できそうだと感じました。 入社後は金融領域の子会社、LINEショッピングやLINEトラベルなどのEコマース領域を担当し、21年4月からPeople Partner室の副室長として、HRBP組織全体をマネジメントしています。

小向

前職はヤフー株式会社で人事を担当し、組織開発、人材開発、評価制度設計運用、タレントマネジメントなどの領域を経験してきました。LINEへ入社を決めたのはヤフーとの統合発表後で、日本でも類を見ない両社の統合を双方の立場から見てみたくなったからでした。

他にもLINEを選んだ理由は大きく2つあって、1つは影響力の大きいサービスに自分が携わっていることがやりがいに繋がると考えたこと。もう1つは、これだけの短期間で大きな組織に成長すると、組織開発面での課題も多いだろうと思ったことです。組織の成長に伴う様々な課題を前職で見てきたので、そこでの経験を活かすチャンスがあると考えました。入社後半年は特定の組織に属さず組織開発に横断的に取り組み、現在はチームマネージャーとしてメンバーとともに各事業を担当しています。

ーーHRBPチームの役割や組織について教えてください。

大野

HRBPチームは、LINEの人・組織の課題解決に向けた企画立案、マネジメントを主な役割としています。カンパニー制のあるLINEでは、金融やAIなど事業領域ごとのカンパニーが存在します。また、本社機能として開発やマーケティング、バックオフィス、LINEアプリの企画などの部門もあり、カンパニーや部門ごとに1〜2名のHRBPをアサインし、組織・人材・カルチャーの課題に向けた取り組みを実行しています。

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HRBPを一言で表すと「総合格闘家」だと思っています。いわゆるHRのジェネラリストであり、かつタフネスさを備えている必要があります。LINEのHRBPは、組織開発がメインの役割ではあるものの、業務領域を限定することなく課題解決に向けてできることは全て行います。現状では、各組織のニーズやコンディションに応じて、採用や評価、労働に関する課題に組織リーダーと共に向き合い対処しています。HRBPの業務を「ここからここまで」と限定しすぎていないことも、LINEのHRBPの特徴の一つかもしれません。

例えば、採用が課題の組織であれば採用戦略や選考フローの見直しを行いますし、組織内の人事評価に課題があれば、評価基準や評価の考え方、カリブレーションの実行などを行います。時にはその組織独自の制度企画やその導入までサポートすることもあります。

さらにHRBPは、事業リーダーや組織リーダーと事業戦略やビジョンを共有しビジネスを深く理解するパートナーとなることも大切です。組織リーダーは人・組織課題の解決だけではなく、同時に事業を成功させなければなりません。LINEのHRBPは、メンバー一人ひとりのコンディションや組織状態を把握しながら、双方のバランスを維持し有効性のある企画提案と実行ができることが求められますね。

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約3年前に立ち上げたHRBPチームには現在、採用や制度運用やPayrollといった専門性の高い人事領域が強い人や、他社でのHRBP経験者、社内公募で事業部からジョブチェンジした方など様々なバックグラウンドを持つメンバーがいます。成長意欲が高く、どうしたらもっと組織が良くなるのか、組織へ貢献できることを考え、メンバー同士で意見交換を行いながらそれぞれ自走しています。

キャリア・志向性はメンバーによって様々ありますが、HRのジェネラリストになるという思いは共通しています。ビジネスを理解し、課題解決に向けた取り組みをプロフェッショナルとして実行することに軸足を置きつつ、近い未来には各担当組織にとって真のパートナーであり、CHRO(Chief Human Resource Officer)のような役割を果たせるようになることを目標としているメンバーが多いです。

いまはチームメンバーの増員や組織開発モデルの確立などを経て、チームとしての体制も整ってきましたが、LINEの事業拡大の速度に対し、HRBPの充足は十分とは言えず、まだ未配属の組織が存在するのも事実です。会社全体の課題をカバーする体制を作ることが目下の課題です。

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ーー具体的な業務内容をそれぞれ教えてください。

大野

現在HRBP組織は担当事業ごとに3つのチームに分かれています。私はそのうち、4つの事業/カンパニーと、2つのLINEグループ会社を担当するチームのマネージャーも兼任しています。業務内容としては、具体的には、まず「組織課題の特定から解決策の立案」を行います。組織課題は、その時の経営方針や事業フェーズにより大きく異なります。全く同じ課題解決方法が転用できるケースは少なく、必ず「本質的な課題の特定」から行います。組織リーダーとの協議や課題感のインプット、場合によっては多くのメンバーにインタビューを実施し、少しずつ課題そのものを明確にしていきます。明らかになった課題に対する有効な解決法を立案し、組織リーダーに提案します。

手法としては、従業員自らが働きかけ、組織をより良い状態にするための活動を支援しています。行動科学的なアプローチから具体的なマインドセットまで、組織が自走する仕組み作りが狙いです。タレント人材や後継者への育成プラン策定、重要ポジションの迅速な採用とアサインについても積極的に働きかけていきます。優秀な人材により多くの成長機会を提供すべく、研修・育成プランの立案実行も同時に行います。その他、人事に関わる労務管理、人的トラブルの解決もHRBP組織の業務領域の一つです。

ただ、こうした役割を果たすにはある程度組織が成熟している必要があります。LINEでは新規事業の立ち上げも多いですが、出来たばかりの組織においては制度面の整理や基本的な労務管理が優先されることもあります。こうした立ち上げ期においては、人事組織のプロフェッショナル部門と事業部の仲介役を担い、円滑なスタートを切れるように立ち回る事も求められます。

小向

私のチームでは、2つの事業/カンパニー、開発部門全般、法務の部門を担当しています。HRBPとしてやっていることや考えていることは、大野さんのチームと基本的に一緒ですね。組織リーダーである執行役員からサポート依頼や課題共有を受けることが多いのですが、執行役員から見えている景色とメンバーから見えている景色は違うこともあります。HRBPは、自分自身の主観はもちろん、執行役員の言うことだからといって課題をそのまま鵜呑みにするわけにはいきません。事業観点、人事観点、組織開発観点から客観的事実を収集し、HRBPとして主体的に課題を設定することから始まります。

数値化できる定量的情報はもちろん、数値化できない1on1による定性的情報を積み重ねてできるだけ正しい課題に近づく努力が必要です。その上で組織に属する人が今後取り組むべき課題の本質に気づき、合意することが最も重要なことだと考えています。現場で日々発生する短期的な課題から、「視座を高く持ってほしい」「主体性を持ってほしい」というような組織長から求められる中長期的な課題など、扱う課題は様々です。課題の表層だけを見るのではなく、視座を高く持てない理由、主体性を持つことができない理由を深堀り、本質的な課題に対して手が打てないと解決されません。そのように中長期的・短期的な課題の両方に対してアプローチしていくことが大切だと考えます。

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ーー実際にあった組織課題とその際のアプローチについて、教えていただけますか。

小向

たとえば、「コロナ禍の中で組織内の関係性が希薄になっている。関係の質を高めてほしい」という相談をいただいたことがあります。このような場合、関係の質を高める施策をいきなり行うことはほとんどありません。まずは定量的、定性的に事実を集めて課題設定を正しく行うことが第1フェーズです。関係性が希薄になっていることで具体的に起きている問題は何か、関係性が希薄になっている理由は何か、そもそも希薄とはなにと比べて希薄と感じているのか。このような問いを立てて、多面的に情報を集めます。

また、近い未来においてその組織で達成しなければならないミッションや目標とその時間軸について確認します。常に気を付けているのは、良い組織や関係の質、良い人材開発、これらそのものが目的になってしまわないようにするということです。組織のミッションをクリアするために解決しなければならない課題を正しく設定し、事業長やステークホルダーのみなさんと合意することを第一義に考えています。

第2フェーズは、設定した課題に対して施策を設計することです。人の出入り、仕事のアサイン、評価・報酬、人材開発、組織開発など人事施策は様々ありますが、私が最も大事にしているのは施策の一貫性です。例えば、「関係の質を高め、お互いにフィードバックできる組織をつくる」というテーマでワークショップを行い、互いの意識を揃えたとします。ところが、フィードバックの知識やスキルが無い状態ではよいフィードバックはできません。ですので常に俯瞰して組織を眺めて、長期的施策・短期的施策を組み合わせて一貫した設計をすることを意識しています。

先の例で言うと、ワークショップでは「関係の質が高まった先には、フィードバックができるようになりたい」という気付きを醸成し、フィードバックスキルを身に着けるための研修プログラムを提供します。そして、評価時には具体的なフィードバックのポイントについてフォローする、といった一連の流れで施策を設計します。

第3のフェーズは、施策の実行です。一連の流れで設計した施策を粛々と運用するのですが、いつも予定通りにうまくいくとは限りません。人や組織についての課題解決は正解がないので、100%予定通りに事が運ぶことも少なく、試行錯誤を繰り返す日々です。以前聞いた話では、研修で学んだフィードバックの手法を使って部下との面談に臨んだところ、後日部下から「退職を考えています」と言われたそうです。慌てて対策を考えるために事業部長と話し合うという事はよくある話です。

ーー「LINEのHRBP」として働く上でのやりがい、魅力について教えてください。

小向

「日本最大規模のサービス」と「発展途上の混沌とした組織」が最大の特徴であり魅力です。LINEの社員はとにかく良いサービスをつくることに情熱を注いでいます。組織を開発するパートナーとして、人・組織の面からアドバイスやディスカッションを行うことは毎日大変な刺激があります。一方、LINEの社員数が増えつつも人・組織の成長スピードが追いつかず、組織を円滑に回すための体制づくりやルールの策定が不十分なのも事実です。

その状態を不満に思うのか、やりがいがあると思うのかは、大きく個人の価値観に依存すると思います。LINEは「WOW」を生み出す精神に加えて、組織としての再現性やガバナンスが求められるフェーズに入っています。こちらもまた、そういった状況を楽しんで自ら行動していけるかどうかが重要だと考えます。

大野

LINEのHRBPにとって特に重要なのは、事業・サービスに合わせたスピードで動くということです。LINEでは事業をドライブするという意思決定が下されると、組織の垂直立ち上げも当たり前に行いますし、短期間で組織を2倍、3倍に拡大していくこともよくあります。事業計画ができると、それに対しての人員計画も策定されますが、大きな規模の採用・異動調整などを同時に行うことになります。また、増員が進めば、マネージャーが不足したり、未経験の新任マネージャーの立ち上がり支援が必要になってきたりします。組織課題は認識できているけど、その整理や施策検討に手が回らなくなるということも発生してしまいます。

こうしたスピード感にアジャストすることで、HRBPとしての自身の対応力を高めていくことができます。また領域や規模も異なる複数の事業運営を担当・経験することもできますし、合併や分社化などのPMIにも携わることもできます。ただ、これは難しさでもあります。一人ひとりがHRBPとして把握しなければいけない事業や人・組織の範囲は広いですし、多種多様な人事課題に迅速に対応していかなければなりません。

私自身、短期間で様々な課題やシチュエーションに向き合えましたし、これまでのキャリアを振り返ってみても、同じ期間内でこれほどの経験を積めたことはなかったと思います。自身のマーケットバリューを向上させるには最高の環境だと思います。一方で、地に足をつけた状態でじっくりとキャリアを積み上げたい方、統一されたルールを遵守し、整備された業務環境でこそ能力を発揮できる方にとっては、LINEのHRBPは不規則で活躍しづらい環境に映るかもしれません。

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ーーHRBPとして感じる、現在のLINEが抱える課題やHRBP組織自体の課題にはどういったものがありますか?

大野

まず、LINEという会社の課題としては、2021年3月に完了したZホールディングスとの経営統合によって、大きく組織が変わるターニングポイントを迎えています。また、ユーザーおよび関係者の方々に安心してサービスをご利用いただくためのデータガバナンスの強化への対応もあります。

LINEは今、新たな価値を生み出すために再スタートを切る大きな「変化」の段階にいます。今まで以上に組織の一体感を醸成する取り組みや、チームでより成果を上げる組織づくり・伴う人材活用・育成の在り方を考えていかないといけないタイミングだと思っています。

小向

そうですね、私もキーワードは「変化」だと考えています。それも、もう少し先に来るものとして、市場が大きく変化することが考えられます。LINEが利用されるようになったのはスマートフォンの普及が一因ですが、近い将来新たなデバイスチェンジが起きるはずです。

その時に我々は変化をチャンスと捉え、何を仕掛けることができるか。また、多くの方に利用していただいているサービスがゆえにリスクに対してどう対応していくか。様々な変化に常に対応していかなければならないはずです。

HRBPとしては必要な人を必要な場所に配置していくことの精度とスピードを上げていきたいですね。チャンスを逃さず、ピンチに立ち向かうために組成を行い、その組織を最大限に機能させるためのサポートを行っていきたいです。

大野

組織を最大限に機能させる一環としては、HRBPとして提供するサポートサービスの統一化や、属人的になり過ぎない組織の仕組みづくりと個々の能力開発を両輪で進めていく必要があるとも考えています。

小向

あと最後に、私を含むHRBP一人ひとりの成長が最大の課題ですかね。さらに言えば、成長をやめないこと。会社として注力すべき事業を担う人材のパートナーとして信頼されるために知識・経験・スキルを磨き続けなければなりません。

その中でも特に必要なのは感謝される仕事だけでなく、時には相手にとって耳の痛いことを伝えることも必要だと考えています。相手の良い点をさらに推進し、苦手をフォローし、時には叱咤激励する。それを実現するためには課題について常に考え、自論を持ち、それをアップデートし続けていくことが求められると思います。

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ーーどのような方に来てもらいたいですか?また、どんな方に向いていると思いますか?

大野

HRBPの仕事はルーティンで考えられるものではないため、事業の状況や組織のコンディションを見極めて必要な対策を自ら提案していくスタイルが求められます。

振り返ると、立ち上げ当初の3年前は「HRBPって何をする人?」と問われるほど認知度の低い状態でスタートしました。最近ようやく「この組織にHRBPは配属されてる?」「組織状態をHRBPに聞いてみて」などと言われるようになってきました。これは、周囲の環境に依存するのではなく、HRBPのそれぞれの担当が自らポジションを確立し、それぞれの部門に価値を証明していったからだと実感しています。

自分の力で組織の課題を特定し、オーナーシップをもって取り組むことが出来る方は、多岐に渡って品質の高いアウトプットを出し続けられると思います。そこに面白みを感じ、HRBPチームの価値観に共感できる方をお迎えしたいと強く願っています。また、クライアントである事業/部門が「これは課題だ」と認識したもの全てに手を打つ、そんな気概とホスピタリティを兼ね備えた方は必ず活躍できます。

小向

「HRBPとして将来活躍したい」というよりは、「これまでのHRBPとしての経験をLINEという会社・事業で活かしたい」という方を求めます。メガベンチャーというサイズと自由な企業風土を活かしながら大きく会社が変わろうとしているフェーズの中で、これまで培われた経験を元に遺憾なく腕を鳴らしていただきたいです。

あとは、与えられたルールよりも自らルールを作り、道を切り開くことができる方だと合うと思います。世間に大きな影響を与えるサービスを扱っているという自覚が持てる方、そして何よりも人として良い人であり続けようとする方を求めます。

大野

まだまだ未熟な組織ではありますが、今、多くの変化を乗り越えようとしているLINEで、恐れず多くのチャレンジをしていきたいと思っています。数年後には、事業の成功や組織改善の後ろには「HRBPの存在あり」と言われるよう、全員が高い視座を持つ組織にしていきたいですね。

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ーー最後にメッセージをお願いします。

小向

LINEで働くことが「安全」ではなく「わくわくする」と感じるなら、楽しんでもらえると思います。

大野

会社によってHRBPの形は様々であり、その会社の歴史や事業形態によって、求められる役割やミッションも異なります。LINEほど変化がある会社はなかなかありませんし、これからも変化し続けていきます。誰かがやっていたHRBPという役割を引き継ぐのではなく、新たに「自分が思うHRBPというポジションを作りたい」という方にはとてもフィットする環境とフェーズだと思います。

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桃木 耕太

2013年にLINEに中途で入社、今は開発組織と採用組織でWebサイト/コンテンツやイベントの企画/制作などをしてます。