LINEらしさの追求の先に。「Hybrid」な働き方を選んだ理由

2021年10月、LINEでは「LINE
Hybrid
Working
Style」という新しい働き方をスタートしました。
昨今の状況を踏まえた働き方で、チームとして最も高いパフォーマンスを発揮するために、組織や職種の特性に応じてオフィス勤務と在宅勤務を組み合わせたハイブリッドな働き方を維持し、在宅勤務や自宅以外での一時的なリモート勤務を可能とするものです。
「LINE Hybrid Working Style」概要
- チームのパフォーマンスが最大化する働き方を推奨します
- 出社を前提に置かず、各チームにて働き方のルールを作ります
- 「月末や定例ミーティング時は出社」など、チームごとのルールに則ってハイブリッドな在宅勤務が可能です
- 居住地は、11時までにオフィス出社が可能な範囲を推奨します
- 会社が認めた場合などは、一時的に居住地以外に滞在しての勤務が可能です
参考: LINE Corporation プレスリリースより
今回は、その新しい働き方の制度づくりの背景について、Employee Care室の吉田に話を聞きました。
――今回、LINEの新しい働き方「LINE Hybrid Working Style」がスタートしました。新しい働き方を考えるきっかけは、やはりコロナ禍でしょうか。
そうですね。LINEでは、2020年1月に新型コロナ感染症の影響が出てからすぐに、在宅勤務のトライアル期間を経て、在宅勤務制度を導入しました。2020年6月からは「新しい働き方」の模索期間として、暫定的にオフィス勤務と在宅勤務を組み合わせた働き方を開始しました。
――「新しい働き方」について、なぜ模索期間を置いたのでしょうか。
新しい働き方について大事なことは、感染症予防という面で従業員の安全を確保しつつ、時代の変化に対応できる形であることです。LINEが今後もNO.1を目指しWOWを生み出し続けるため、LINEらしさを感じられる文化を残しつつ、より効率的に高いパフォーマンスを発揮できる働き方はどんなものか。その働き方を導き出すための模索期間が必要でした。その結果、答えとして出した「LINE Hybrid Working Style」は、模索期間中での社員へのアンケートやマネジメント層からのヒアリングを踏まえて、役員たちと何度も議論して決定したものです。
――1年以上の模索期間があったということになりますが、その間どのような検討がありましたか。
まず行ったのは、2020年5月に行った、日本で働く全社員へのサーベイです。在宅業務に不便のない環境や設備を整えて在宅勤務に社員も慣れてきた頃に、「在宅勤務とオフィス出社を比べて、パフォーマンスが上がるのはどちらか」を尋ねました。すると、「在宅勤務のほうが捗る」という意見もあれば、「出社したほうが捗る」という真逆の意見もあり、当然ですが人それぞれに考え方が違っていました。
LINEは、数多くのサービスやビジネスを展開していて、職種もエンジニア、デザイナー、営業、サービス企画、管理部門など様々です。東京都内のオフィスだけでも3000人以上が勤めている会社において、これまでの働き方を抜本的に見直すということで、多くの議論が必要ということになりました。
――バラバラの意見が出る中で、どのように議論が進んでいったのでしょうか?
経営陣や執行役員たちとは、どうすればチームや組織全体としてパフォーマンスを発揮できるのかを根本から検討していくことになり、2021年の感染者が落ち着いてきた春ごろから、本格的な検討が始まりました。ただ、すぐに意見が一つにまとまるということはなく、数ヶ月かけて何度も議論を重ねることになりました。社員同様に、役員間でもオフィス出社か在宅勤務かで意見が分かれたんです。そこで理由を深掘りしていくと、どうやら「パフォーマンス」という言葉の背景に、職種によって求められるスキルが違うんだな、と気付きました。
例えば企画職だと、プロジェクト推進のために社内wikiに情報を整理し、プロジェクト管理ツールを活用することが重要で、ドキュメントに情報をまとめるスキルが強く求められます。対して、セールス職は、客先に訪問する機会も多く、対面でのコミュニケーションのスキルが求められる傾向があります。
この二つの職種だけ見ても、高めたいスキルが全く違う。だから、勤務形態のルールを全社一律で定めずに、チームごとに運用できる柔軟性を持たせた方がLINEにフィットしているのでは、ということになりました。
――オンラインとオフラインの良さをそれぞれ使い分ける、それがHybridということですね。
はい。もう一つ、検討する中で見えてきたのが、これまでLINEって「同じ釜の飯を食う」ことを大切にしてきたよね、ということでした。
いま思い返すと、コロナ禍以前より、LINEはワークショップを好む傾向があったと思うんです。例えば、プロジェクトのキックオフや締め、ブレストのタイミング等、なにかある度に一緒に集まって議論していました。日本国内はもちろん、協業している韓国等の社員とも、国もまたいですぐ集まっていたんですね。いわば、「同じ釜の飯を食う」ことで信頼関係を築いてきたんだ、と。
もちろん今でもその文化は変わりませんが、在宅勤務で業務が滞りなくまわっていても、LINEはこれまでの膝を突き合わせてコミュニケーションをとるスタイルを今後も続けていきたい、という意見でまとまりました。
だから、パフォーマンスを重視する一方で、オフラインで培われる信頼関係の良さも掛け合わせていく。これが、LINEがHybridな働き方を作った理由の一つです。
――現在は、どのようなチームが在宅勤務とオフィス出社を使い分けていますか?
現在、東京都内のオフィスに勤務している社員のうち、およそ75%が在宅勤務を行っています。エンジニアをはじめとする、在宅勤務でも問題なく作業ができるチームの方は、その多くが在宅勤務を選んでいます。
一方、オフィス出社を選んでいるのは、先ほども伝えたように、セールス職が所属するチームが多いですね。あとは、個人情報を扱う職種など、セキュリティ面からオフィス出社を選択しているチームもあります。在宅勤務によって情報が流出してしまうようなことは絶対に避けなければなりません。そのため、多くの社員が利用できる通信のセキュリティ保護を可能にするVPN回線を整備し、しっかりとセキュリティ体制を整えました。ただ機密性の高いデータを扱う業務であれば、出社を必須にするなどの管理体制で運用しています。
他にも、ご家族の都合などで、自宅環境が仕事をするのに集中しづらい場合に出社されている方も多いです。オフィスは快適に仕事をできる環境が整っていますからね。
――現在は在宅勤務を選択するチームが多いですが、課題として見えてきているものはありますか?
コミュニケーションの観点での課題は大きいと考えています。
例えば、オフラインの場で、メンバー同士で連携していく中で協力関係を築くことで、チームとしてパフォーマンスが上がりやすくなることも多くあります。例えば、新入社員が入ってきたときに行うコミュニケーションなどは、オフラインの方が効果的です。
実際にメンバーやマネージャーからの意見でも、在宅勤務の影響でコミュニケーションが減ることに対して不安視する声もありました。
コミュニケーションの課題に関しては、チームの歓送迎会等の費用を一部補助する制度(社内親睦費)をオンラインでの開催でも適用可能にするなどの対応を行っていますが、今後も在宅勤務におけるコミュニケーションTipsを共有しつつ、定点観測をし続けていきます。
――今回、新しい働き方のもう一つの特徴としては、推奨する居住地の範囲が拡大しましたね。
居住地は、各チームで設定したルールに対応できる場所を選んでいただくようにお願いしています。在宅勤務の場合には当日朝の移動で午前11時までにオフィス出社できる範囲であれば、日本国内どこに住んでいただいても構いません。オフィス出社の場合にも、チームで決められている時間内に出社できれば、居住地は日本国内どこでも可能としています。基本的には、いずれの場合においても対面でのコミュニケーションが必要な場合に対応できるように、午前11時までに出社できる範囲と定めています。
これまでは、配偶者の転勤や介護などのご家庭の事情が生じた場合には、やむを得ず遠方に転居して退職したり、休職したりというケースがほとんどでしたが、今後は転居した後も継続して働き続けられるようになります。
また、一時的な滞在の場合でも、セキュリティ上の問題がない環境であれば、その場所で勤務することができます。遠隔地でも業務できることで、個々人のライフイベントに合わせて働く場所を選ぶことができるようになります。
――吉田さんも、この制度を利用されているそうですね!
はい、そうなんです。プライベートの話になってしまいますが、2年前にLINEに入社した直後に夫の愛知への転勤が決まり、それからずっと単身赴任生活をしていました。コロナ禍真っ最中に東京で一人暮らしを続ける中で心身のバランスを崩しかけたこともあり、上司と相談して、愛知に転居することに決めました。
――実際に遠方で業務をすることになって、変化はありましたか?
私のチームは原則出社不要のため、自宅から問題なく業務を進められています。でも同僚や上司と直接会って話すことも大事だと思っているので、自主的に月に2回ほど東京の四谷オフィスに出社しています。
プライベートの面でいうと、まずは家賃の支払いが一部屋分になったのがかなりありがたいですね。(笑)あとは、やはり家族と暮らせるのはとても幸せです。自身の体調も復活し、毎日元気に過ごせています。田舎の両親にも心配をかけてしまったのですが、夫と同居することで安心させることもできました。思い切って遠方での業務を選択してよかったと思っています。
――ここからは、少し話題を変えて、多くの社員が在宅勤務をする中での、これからのオフィス計画について教えてください。
オフィスについては、単に働く場所ではなく、「従業員が集まることによってWOWの創造を促進する場」となることを目指しています。
先ほどコミュニケーションの観点でもお話ししたように、膝を突き合わせて深い議論をするようなときに、より質の高いコミュニケーションを行えるように、ワークショップルームを新設しました。
他にも、需要が増えたオンラインミーティングに対応できるように個室ブース数を180台増設し、社員席のフリーアドレス化を進め、自チームはもちろん、他のチームともコミュニケーションをとりやすい席を選んで仕事ができるようにしました。
――オフィスも新しい姿になっているのですね。今後、この「LINE Hybrid Working Style」はどんな制度を目指していきますか?
もっとも重要なことは、チームや組織のコミュニケーションの課題と向き合い、もっともパフォーマンスの出る働き方とはなにかを模索することだと考えています。
パフォーマンスが出る働き方というのは時代によって変化してきますし、組織やチームのあり方によってコミュニケーションのあり方も変わります。よりよい働き方、よりよい社員のコミュニケーションのために、今後も「LINE Hybrid Working Style」をアップデートし続けていきたいと思います。