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二人のリーダーが語る、これからのLINEの広報組織とコミュニケーションのプロとしてあるべき姿

社内外へのさまざまなコミュニケーションを担う広報の仕事。事業環境や組織の変化も多く、社会や業界からの注目度や反響も多いLINEにおいて、広報組織やそこで働く人に求められるものは何なのか。

今回は、LINEの広報室を取りまとめるLINE 執行役員 マーケティングコミュニケーション担当 / 広報室室長の嘉戸彩乃と、Zホールディングス執行役員 広報統括部/LINE 広報室 副室長 伊東由理に、これからのLINEの広報組織が目指す方向と働くメンバーたちに求めること、そしてLINEで広報に取り組むことの価値などについて話を聞きました。(写真左から嘉戸、伊東。)

――まずは自己紹介をお願いします。

嘉戸

LINEに入社したのは2015年2月です。新卒では証券会社に入社し、その後通信インフラ系のスタートアップでの経験を経て、次の方向性を考えていたときに、元クライアントだった当時LINEで働いていた方が誘ってくれました。「LINEは急成長中の会社で、人の数よりもやるべき仕事の方がたくさんあるはず」と考えてチャレンジすることにしました。入社当時は新規事業の立ち上げに携わり、「LINEモバイル」事業を企画の立ち上げから担い、社長として経営を任され、それなりの規模になるまで事業を育てることができました。

協業していたソフトバンクへの出向、出産やそれに伴う休職も経験しました。その後、会社としてマーケティング・コミュニケーションの横断組織の取りまとめ役が必要だとなったタイミングで白羽の矢が立ち、最初はマーケティング領域から入り、2021年の春ごろから広報室の室長も務めています。広報という領域には、PMや子会社社長として携わってきていましたが、これまで広報の専門職としてのキャリアはありません。会社全体にとって広報がどういう組織であるべきか、どう組織全体をマネジメントすべきかを伊東さんたちと日々考えています。

伊東

私は2003年に新卒でリクルートに入社し、それまで縁のなかった北海道で、スクール事業の営業職としてキャリアをスタートしました。東京に戻ってきたタイミングで広報へ異動して、それからはずっと広報・IRやコミュニケーションの領域に身を置いています。上場や経営者の交代や謝罪会見も経験し、その後2019年にヤフーに転職して今に至ります。

ヤフー入社後すぐにZホールディングスとLINEとの経営統合を広報として担当しました。その後、Zホールディングスの執行役員として広報とIRを担当し、2021年10月からはLINEの広報も担当しています。これは業務外の活動ですが、日本パブリックリレーションズ協会の副理事長も務めています。

――LINEの広報室は、どのような組織ですか。

伊東

広報室には、大きく5つの役割を担う組織があり、現在約30名が所属しています。会社の活動や事業ごとの情報の対外コミュニケーションを企画・実行する「コーポレート」と「プロダクト」の広報チーム、社員同士やトップとのコミュニケーション・情報共有機会の企画や実行を担う「社内広報」、社内外向けのイベントの企画運営を担当する「イベントプランニング」、組織オペレーションの最適化支援を行う「組織運営」チームです。今日は主に「コーポレート」と「プロダクト」の広報チームについてお話ししますが、他の役割のチームもミッションや求める姿勢は基本的に一緒です。

私たちの役割は、嘉戸さんが主に組織の方針を考えて経営層や事業組織とのチューニングなどを担当し、私はコミュニケーション領域の専門家の観点から、案件ごとの判断やさまざまなアドバイスを行うなど、必要に応じて連携・相談しながら双方の異なる得意領域を中心に分担しています。

嘉戸

少し前提として、広報室の歴史的な部分について触れますね。LINEアプリは2011年にサービスをローンチし、その後会社もサービスも大きく成長してきました。ベンチャーとしてプロダクトへの愛情やイケイケな部分を大切にしながら前に進むなかで、広報も同じように動いてきました。事業の成長とともに各事業に広報担当がつき、マーケティング担当と協力しながら施策の企画・実行を、ニーズや状況に応じて行っていくことが主な動きでした。もちろん広報として役割を果たし、成果を上げられている側面もある一方で、会社全体で統率の取れた動きがしづらくなっていた状況がありました。

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また、LINEを取り巻く社会環境や、多くのユーザーをはじめ、パートナーや広告クライアントといったステークホルダーからの目線や求められる期待値が変わってきています。個人情報取り扱いの管理やそれらに付随する体制に関する課題もあり、より統率の取れたコミュニケーションとその判断・実行、それができる組織が必要になってきました。

現在は広報としてのミッションや心がけるべき姿勢などを改めて定義し、メンバーたちに浸透させて、どのように会社や社会に貢献するのか、徐々に動きを変えている段階です。何より、外からさまざまな角度でLINEを見ていただいている皆さんに、今後のビジョンや姿勢をより正しく理解いただく必要があると感じています。

――2021年の経営統合、またZホールディングスの伊東さんが入ることでの変化はあったのでしょうか。

嘉戸

Zホールディングスの広報と連携できていることはすごくメリットが大きくて、LINEだけでは得難い情報や観点が得られていると感じます。でも管理されているとか、LINE側の裁量権が減っている感じは全然ないですね。伊東さんは、そのあたりのコミュニケーションの取り方とか、何か意識されていることはあります?

伊東

まず、Zホールディングスの立場でお話しすると、Zホールディングスのコミュニケーション方針を検討した際、グループ会社の皆さんに、「どういうスタンスで対峙し、何を大切にしていくか」を深く議論しました。LINEに限らず、他のグループ会社との関わりにおいても、各社の文化や方針を100%リスペクトして、その実現をサポートしていく存在でありたいと考えています。そのうえで必要なアドバイスをしたりインシデントやリスクへの対応などの課題点について助言や伴走を行うのが基本的な姿勢です。

次に、両社の広報組織を担当している立場として、LINEの広報組織やメンバーにどう向き合っているか、の観点でお話すると、意識的に個別最適と全体最適の双方に振りながら、ものごとを考えるようにしています。最後の判断軸は、ステークホルダーにとっての最適解が何かですが、 足並みを揃える必要があるときには、「LINEにどのようなプラスになるのか」を考え、説明したうえで連携するようにしています。もちろん、広報に限らずサービスや事業自体が連携するような案件の場合には、一緒に動いたほうが効率も成果も良くなるので、積極的に協力体制を作って動くこともあります。

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――広報機能を集約し、新たに広報室としてとりたい方向性や、そのために取り組んでいることについて教えてください。

嘉戸

広報機能を広報室として集約し、全社やあらゆる組織や事業部が同じ方向を向いて動けるように目線を揃えることが必要です。プロモーションと連動している広報や、マスコミや報道にまつわる対応を主に担う広報もいますが、LINEとしてどのような目線で何を打ち出していくのかは、意識を揃える必要があると感じています。

まずは、プロダクトとコーポレートの2つの領域における業務や役割を明確に区別するようにしているところです。2021年から本格的に組織整備に乗り出し、つぎはぎも多かった広報組織や機能がようやく少しなめらかに整ってきたかなという感覚です。

伊東

これまではプレスリリースを出せば、取材の依頼がきたりメディアに掲載されたり、なんらかの好意的な反応がある程度期待できていました。また、とにかく情報をたくさん発信することが大切とする部分もありました。しかし社会も会社も、内外ともに大きく変化するにつれ、会社や組織やサービス、最終的には社会にとって価値があるコミュニケーションをこれまで以上に丁寧に設計して実行しなければならなくなりました。

そこで、今後の広報室のミッションを「LINEグループの活動に関わる正しい情報を社内外に情報発信することで、さまざまなステークホルダーからの認知・好意・信頼・期待を高めること」と定義しました。

――広報室のミッションの具体的な内容を教えてください。

伊東

大切な要素はいくつかありますが、一番は認知・好意・信頼・期待と4つの項目を挙げたことです。私たちのサービスの広報を通じ、認知を獲得するだけなく、社会の皆さんから信頼され、期待していただけるよう、真摯に社会に向き合いコミュニケーションをとっていくことが重要だと考えています。

LINEには、世界中の人と人、人と情報・サービスとの距離を縮めるというミッション「CLOSING THE DISTANCE」があります。また、そのベースには、「ユーザーを感動させる初めての体験」や「思わず友だちに教えたくなるような驚き」を意味する「WOW」という価値観があり、さらにもう一つの重要な観点として行動規範があります。法令順守はもちろん、社会と共存し、誠実に向き合っていくための行動規範です。社会の変化、要請に敏感になりながら、こうした価値観も伝えていき、広報の立場で実現できる本質的な貢献を目指すべきだと思います。

嘉戸

ミッションの再定義と合わせて、メンバーに大切にしてほしいことも言語化しました。「LINE STYLE 2.0」のなかから、広報として特に大切にしてほしい5つを抜粋して伝えています。

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「全ての原点は、ユーザーニーズ」はそのままの意味ですが、広報にとってのユーザーは情報の受け取り手や、その情報を出すメディアです。受け取ったユーザーに何を感じてほしいか、そのためにはどのような報道をしてもらえるとベストか、どのようなメディアコミュニケーションをとるべきかを常に考え続けてほしいと思っています。

さらに「オープンな議論と、リーダーによる決断」。事業やサービス側の担当者や責任者にも、広報のプロとして率直かつ建設的な意見をもっと自信と責任を持って発言できるようになってほしいという想いを込めました。事業責任者やプロダクトマネージャーも、広報やコミュニケーションのプロではありません。プロフェッショナルとして、会社やプロダクトが外からどのように見られているかをしっかりと分析してシェアし、最も有効な見せ方を一緒に考え、ちゃんと伴走してほしい。リクエストされた施策の実行だけを担うのではなく、対等なパートナーとして正しく強い広報の介在価値が生まれることを求めていきたいです。

3つ目の「同じゴールを目指し、同期し続ける」と4つ目の「目的なき『一生懸命』は、いちばん危険」は、近いニュアンスのものです。とにかくタスクを実行することを重視しすぎていた考え方や体質から脱却し、アウトカム思考を浸透させる意味で選びました。「なぜやるのか」「やる意味があるのか」を問い、議論やフィードバックを広報内や相対する部門とも常に行うように、という決意を込めています。

最後に「ワクワクしなければ、仕事じゃない」。これは私が一番好きなワードです。やっぱり仕事でも楽しいのが一番いいですよね。LINEにはいろいろな情報が溢れていて、「その情報をとにかく出さなきゃ!」と慌ててしまいがちですが、自分から情報を取りに行って、「どう見せようか?どんな仕掛けを作ろうか?」と前向きにチャレンジすることももっと大切にしてほしいなと思っています。

伊東

個人的な感覚としては、広報室という組織や働くメンバーには、まだまだできることや可能性があると感じています。「プレスリリースを書いた」「キャンペーンのプロモーションの露出を獲得した」だけで完結するのではなく、「何が課題なのか、どうなっていきたいのか」を事業や経営サイドと対話し、そのための筋道や打ち手を提案できる組織になっていきたいです。そのためには当然、社会の動きやユーザーの声にきちんと耳を傾け、理解しようとする姿勢を持つことがより重要だと思います。

そこに至るために必要だと感じているのは「変化対応力」と「楽しみ力」。LINEが置かれている環境や社会の激しい変化に飲み込まれて身動きがとれなくなるのではなく、自ら変化に対応し、変化をリードする力と、とはいえ楽しくないと続けるのはつらいので、自分なりに楽しみ方や価値を見つける力ですね。この2つのスタンスは私自身が大切にしているものであり、広報版のLINE STYLE 2.0にも通じるものです。少し前と比べて、LINEの広報の環境・領域は確実に難易度が上がっていると思います。だからこそ、ここを経験する意義やモチベーションを感じていたいとも思っています。

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――他にも組織を良くするために意識していることはありますか。

嘉戸

サスティナブルな組織にしていきたいです。一定以上のスキルの高さや同じ目線を持ちながら、その人だからできるメンバーそれぞれの広報としての異なる強みや個性を活かして、多様性を持って助け合える組織でありたいですね。金太郎飴的に同じようなバックグラウンド、能力の人たちだけが集まって、誰が抜けても同じアウトプットになることを目指しているということではありません。

組織内でのスキル向上や共通言語化や相互理解の取り組みなども始めていますし、広報担当でなくてもできる業務、もしくは他の組織に任せた方が明らかに良い場合は、その業務を他に委任していくことも進めています。あとは何よりも採用です。広報としての経験やスキルがあって、それでもまだ経験にもスキル獲得にも貪欲な人がいいですね。

――今後、LINEの広報室で働くことで、どのような経験や価値が得られますか。

嘉戸

広報やIRの経験があって、基礎力が身についている人であれば、その力を新しい形で通用させていったり、もっと応用や進化させたりを試せる場所があると思います。担当として特定のテーマを持つことにはなりますが、打席の数や種類が多いようなイメージで、同じことをずっと続けていくことは多くありません。広報として様々な経験と貢献ができる機会が本当にたくさんあるので、必ず成長はできる環境です。

伊東

ある程度の経験を積んできて、「もう一段チャレンジしてみたい」人にはすごくマッチすると思います。これまでご説明したようにLINEをとりまく環境も大きく変わっているなかで、「挑戦すべき・できる」部分が大変多いと思っています。

何よりも、LINEのメンバーの「WOWを届けること」「No.1であること」への意識の持ち方は本当にすごいなと思っていて。パッションがある会社はすごく強いし、そんな組織で一緒に仕事ができるのはハッピーなことだと思っています。今、いろいろな環境や会社で広報として働かれている方のなかで、こういった想いや、難易度の高い環境で広報のプロとして取り組むことの価値に共感してくれる人が多いと嬉しいですね。

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桃木 耕太

2013年にLINEに中途で入社、今は開発組織と採用組織でWebサイト/コンテンツやイベントの企画/制作などをしてます。