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REPORT

LINE Web3領域事業のグローバルNo.1戦略とは

近年、様々なところで耳にする「Web3」。Web3とは、ブロックチェーンの技術を発端に生まれた単語で、新しいインターネットやプラットフォームのかたちを作り上げるものとして盛り上がっています。
LINEは2018年よりブロックチェーン事業に着手し、2021年からの日本でのサービス展開を皮切りに、2022年にはグローバル規模で本格的にWeb3事業を展開しています。

今回は、LINEのグローバルブロックチェーン事業総括 キム・ウソクが、LINEのWeb3事業のこれまでと今後の成長戦略と挑戦について語りました。
※3月30日(木)に報道関係者向けに実施した説明会の抜粋版です


<登壇者プロフィール>

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Woosuk Kim キム ウソク
LINE NEXT Inc. 取締役 / LINE TECH PLUS PTE. LTD. 代表取締役CEO

韓国の延世大学 経営学科を卒業後、Fintech分野の事業専門家として外為サービスを行うFintech企業Sentbe(セントビー)を共同設立し、CMOに就任。その後、2018年に「LINE Blockchain」の立ち上げメンバーとなり、LINE独自の暗号資産「LINK」の発行とブロックチェーンプラットフォームをローンチ。以来、「LINK」のリワードソリューション開発や「LINE Blockchain」のプラットフォームを利用した様々なdAppサービスのリリースを進め、グローバルで「LINE Blockchain」事業を牽引し、LINE独自のブロックチェーンとトークンエコノミーによるエコシステムの拡大を推進している。

LINEのWeb3について

ウソク:まず初めに、LINEのWeb3事業への取り組み全般についてご説明します。LINEは2018年からブロックチェーン事業を開始しました。ブロックチェーンの開発・提供を目指す専門組織「LINE Blockchain Lab」を中心に、これまでブロックチェーンベースの技術を作り、日本市場を中心に様々なPoC(Proof of Concept/技術、アイデアなどの手法の実現可能性を検証すること)を行ってきました。そして2022年より、本格的なグローバルでの事業展開、サービス開発に着手しています。

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私たちはWeb3市場において成功するという確信のもと、昨年、ブロックチェーンの市況が低迷していたなかでも、積極的にグローバル人材を採用しました。現在は、4カ国・5つの法人において300名以上がWeb3事業に取り組んでいます。さらに、ソフトバンクやNAVERなどのグループ会社とパートナー企業からも戦略的投資を受け、共にWeb3のエコシステムを構築しています。

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LINE社内の組織体制

Web3のプロダクト

ウソク:LINEは、独自のブロックチェーンを持ち、暗号資産取引所やブロックチェーンウォレット、NFTマーケットなどのサービスを展開しています。ほとんどのサービスが昨年にリリース、または新たに開発に着手したサービスです。

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市場のこれまでとこれからについて

ウソク:次に、私たちがターゲットにしている市場について説明します。
Web3というキーワードはブロックチェーンによって誕生しました。Web3を簡単に定義すると、特有のプラットフォームに依存せずにユーザー自身が情報を所有し、経済活動を行うことができる新しい環境・状況のことです。
これまでの市場は、実際には、一般化を成し遂げることができなかったと思っています。あまりにも多くのプラットフォームが、暗号資産をレバレッジし、投機的な運営により破産し、ユーザーの信頼を失ってしまいました。昨年基準で10万個のWeb3サービスが無くなっています。

既存のWeb3サービスは、一般ユーザーのためではなく、投資家を重視していました。そのため、一般ユーザーにとっては非常に使いづらく、サービスを利用するためにユーザーが多くを学ぶ必要がありました。ブロックチェーンに関するニュースを耳にすることはあっても、自分を含め、周りの友人が直接気軽に使えるようなサービスはない状態でした。

しかし最近は、世の中のWeb3サービスの事例を見ると、暗号資産をレバレッジしたり投資的な目的ではない利用も増えてきています。暗号資産を勉強せずとも気軽に使えて楽しめるWeb3サービスが作られてきているのです。
つまり、初期の6年間は投機市場であり、今後は一般向けにサービス市場が開かれていくと確信しています。

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その鍵となるのがNFTです。NFTは非常に重要な役割を担っていると思います。NFTは投機資産というよりも、資産に近いものです。
NFTは、暗号資産とは異なり、ゲームやコンテンツ、エンターテインメントなど様々な産業でPoCが行われており、単純な投機よりもサービスとして取引するユーザーが多くいます。
今後の見立てとしては、NFT2026年までに年間20兆円取引市場に成長し、モバイルアプリ内決済市場の約40%まで成長できるだろうと言われています。

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ちなみに、モルガン・スタンレーでもまた、ブロックチェーンが今のように成長すれば、2025年には少なくとも5億人がWeb3ユーザーになると見込んでいます。そのため、これから2年間が非常に重要な時期と考えられます。
私たちの目標は、初期投機市場ではなく、今後成長するWeb3の一般ユーザー向けのサービス市場において、グローバルNo.1になることです。現在、LINEのユーザー数はアジアが多いですが、アジアに限られず世界中でインパクトを与えられるようなサービスを準備しています。

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LINEのWeb3サービス紹介

ウソク:LINEのWeb3ビジネスの紹介を①NFTマーケットプラットフォーム、②サービス、③新しいパブリックブロックチェーンのメインネットの3つに分けてご紹介します。
まず、NFTマーケットプラットフォームです。
Web3の普及のためには、NFTマーケットインフラが非常に重要です。 ユーザーは投資商品よりもコンテンツを好む可能性が高いためです。そうした狙いから、LINEは一般ユーザーのためのマーケットを昨年から構築してきました。
アジアで100社以上とのパートナーシップを構築し、現在アジア最大のNFT経済圏を目指しているところです。

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私たちが最も重視しているのは、NFT決済のイノベーションです。 初期のNFTは暗号資産でしか取引できなかったため、暗号資産の派生商品のように扱われていました。LINEでは、ソーシャルログインで簡単に登録、好きな決済手段で支払いができるため、手軽にNFTを取得できます。
また、現在、日本・韓国においてはNaver PayLINE Payを連動させるなど、多通貨取引システムを提供しています。台湾、タイなど他のアジア地域でも導入に向けて準備しているところです。

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ベータ版のリリース以来、漫画、飲食、アート、スポーツなどの業界において、パートナーシップを結んでNFTストアを構築。

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LINEのWeb3事業の本格化以降、日本では、80を超える企業、ブランドがNFT商品を展開している。

また、一般ユーザーが簡単に参入できるよう、LINEアプリなどとの連動も積極的に行っています。LINEユーザーを対象としたNFTのエアドロップ機能やLINEスタンプ付きNFT、LINEプロフィールでのNFT機能を昨年から提供しています。

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グローバルNFTプラットフォームDOSIは昨年9月のベータ版リリース以降、ウォレットアカウント数が400万を超えました。ウィークリーアクティブユーザーは100万人を超え、累積の取引件数も25万件以上となりました。
3月の取引者数と取引件数基準では、アジアのプラットフォームの中で1位、グローバルでも3位規模となっています。
特に我々が注目しているのは、NFTの決済手段です。Naver Payとクレジットカードの比率が50%に近づいており、一般サービス市場への広がりを感じています。

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LINEの主要サービス

ウソク:LINEグループが提供する主要分野のサービスについてご紹介します。
LINEは①アバター/メタバース、②ゲーム、③ファンコミュニティ分野において大きな成功事例が生まれると考えています。その3つの分野において「ACRZ(アルファクルーズ)」、「GAME DOSI(ゲームドシ)」、「AVA(エイバ)」というプラットフォームを準備中しています。すべて今年9月ごろまでにリリースする予定です。

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3Dアバターを作成できるNFT基盤の3Dアバターアプリ。アバターを自由にカスタマイズできる上、ファッションアイテムをNFTとして購入またはユーザー同士で売買することができる。

「ACRZ」は、ブロックチェーンを知らないユーザーでも簡単に利用することができるNFT基盤の3Dアバターアプリです。まもなくベータアプリをリリース予定です。年内には、グローバルのクリエイターエコシステムを構築し、他のプラットフォームと連携しながらメタバース領域に拡張していく予定です。

※1: 参考プレスリリース(2023年4月4日発表)<LINEの新しいアバターサービスが登場! 3Dアバターアプリ「AlphaCrewz」のベータ版を 本日より提供開始

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Web3ゲームプラットフォーム「GAME DOSI」は、開発者がWeb3ゲームを簡単に構築し、ユーザーはゲーム内のさまざまなアイテムと商品を取引できる。ゲーム性と楽しさに特化し、グローバル30億人のゲームプレイヤーをターゲットとしている。

次に、Web3ゲームプラットフォームの「GAME DOSI」は、暗号資産の販売・投資ではなく、面白いゲームを提供することに特化しています。ユーザーがゲーム感覚でアイテムをNFTで取引し、収益も得ながら楽しめる環境を目指しています。
GAME DOSIも間もなく公開予定です。今年中には、少なくとも4つのゲームをローンチ予定です。

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AVAはWeb3のファンコミュニティプラットフォーム。ファンは自分が好きなアーティストのNFTを所有し、アーティストの限定特典をもらえるなど、メンバーシップを楽しめる。現在、韓国の大手芸能事務所と連携して準備中。

最後に、Web3のファンコミュニティである「AVA」も今春にローンチ予定です。ローンチに先駆け、韓国の芸能事務所YG ENTERTAINMENT所属のグローバルボーイズグループTREASURE(トレジャー)とともに、日本だけでなくグローバルでイベントを企画しています。年末までに、参画いただくアーティストをさらに増やし、アーティストを応援できる機能を追加していく予定です。

2:参考プレスリリース(2023329日発表)<「DOSI」のWeb3ファンコミュニティサービス「AVA」 今春、日本でのサービスを開始予定

LINEは単に有名なIPやアーティストのNFTがあれば成功するとは考えていません。重要なのはユーザーに参加してもらうことです。AVAでは、普通のトレーディングカードだけではなく、ユーザーの好きなアーティストのオリジナルカード、そしてNFTを持っていることで、推しのアーティストたちと交流できたり、そういった「体験」を提供したいと考えています。

第三世代のパブリックチェーンメインネット「Finschia」

最後に、LINEが新しく準備しているパブリックブロックチェーンのメインネットFinschia(フィンシア)についてご紹介します。

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LINEは2018年にブロックチェーン事業に参入して以来、プライベートチェーン「LINE Blockchain」を運営しながら様々なノウハウを積み上げてきました。そして今年、一般ユーザー向けのWeb3サービスを拡張していくため、新しいパブリックチェーンであるFinschiaに切り替えてリリースする予定です。
Finschiaは、Web3サービスに最適化しており、主に4つの特徴を持っています。

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まず1つ目は、高いネットワークパフォーマンスです。Finschiaは、イーサリアムと比較して400倍速く、取引コストは98%の削減に成功しました。
2つ目に、持続可能なトークンエコノミーです。これまで、LINEの独自暗号資産LINK(リンク)はLINEが手動で発行していましたが、今後は、支払い報酬のルールにのっとって機械的に発行されます。LINEは、投資を目的とした大量のトークンを発行するICOを行ったり、恣意的にトークンを使用または販売する準備金としてのリザーブを発行しません。これまで、事前発行されたリザーブについて、誤った運営がされたために多くの問題が発生してきたと考えています。Finschiaでは、事前発行リザーブゼロポリシーを用いてこれらのリスクをゼロにしたいと思っています。
事前発行リザーブゼロ戦略については、すでに、様々なコミュニティでポジティブな反応をいただいています。
3つ目に、Finschiaをベースにしたサービスでは、Naver PayLINE Payなどの決済方法を活用できるため、数億人のLINEユーザーへリーチできるスケーラビリティがあります。
最後に、今後のLINEの技術力を基にしたテクニカルスケーラビリティです。まだ準備中ですが、今後様々な複数のブロックチェーンと連携していく予定です。
また今後は、LINEと関連会社、業界のコアリーダーとFinschiaのブロックチェーンを共同運営し、新しいガバナンス構築を目指していきます。
現在、グローバルで業界をけん引している方々たちと協議しながら、新しいガバナンスを策定中です。今年の夏までには公開できる見込みです。まず10社ほどのグローバル企業とスタートし、今後は150社以上に拡大していく予定です。

3:参考プレスリリース(2023417日発表)<LINE、非営利団体「Finschia Foundation」を設立

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Web3 グローバルNo.1

10年前、LINEWeb2においてユーザーをつなぐ大きなソーシャルプラットフォームを作ったとするならば、LINEWeb3は、単純につなげるのではなく、ユーザーが自分で所有し経済活動ができる「都市」を作るようなものだと考えています。それが、グローバルNFTマーケットプラットフォーム「DOSI」の由来です。(「ドシ,도시)=韓国語の「都市」という単語)
最近成長しているAIがウェブの生産性を上げる技術であるならば、ブロックチェーンはウェブの利益と主権をユーザーに与える技術だといえます。ウェブは、常にユーザーが中心となる方向に成長してきており、ブロックチェーンベースのWeb3も必ずその方向性になるだろうと考えています。
私たちは、LINEWeb3でグローバルNo.1となることを目指しています。Web3市場においてグローバルの大きな成功事例を作るため、私たちの挑戦をぜひみなさんにも応援していただければ嬉しいです。



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島瀬 光枝

2018年LINE入社。広報室で社内広報を担当しています。温泉が大好きで、毎月どこかの温泉地へ行くことを目標にしています。