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LINE DAY

【Food】飲食店と深く向き合う出前館だからこそできる「New Normal」の戦い方

2020年9月10日に行われたLINE Business Conference「LINE DAY 2020 ―Tomorrow's New Normal―」。そこでは、これからのパラダイムシフトに向けた、我々のチャレンジを10のセッションでご紹介しました。

今回は、その中の「New Normal × Food」にて登壇した株式会社出前館 代表取締役社長 CEO藤井英雄に、事業戦略の背景や狙いを聞きました。

LINEと出前館は2016年5月に業務提携を締結、2016年10月にはLINEが40億円を出資して資本業務提携。2017年7月からは、出前館の運営ノウハウと加盟店基盤を活かした「LINEデリマ」がスタートしました。

LINEと資本提携している出前館が考える「New Normal」のフードデリバリーのかたちを語ります。

デリバリーとテイクアウトは「標準パッケージ」になる

――2020年3月、LINEが出前館に300億円を出資したのと同時期に、新型コロナウイルスによる不安が日本社会を覆いはじめました。

コロナ禍における「New Normal」という意味では、LINEのファミリーサービスの中で一番大きく影響を受けたのが、出前館だと思います。

まず出店問い合わせが急増し、次に三密回避を目的としたデリバリー利用が増大、そして配送員のニーズが高まりました。

――今後、飲食店はどうなっていくと見ますか。

経営者さんたちの予想を聞くと、イートインの利用数はもう以前と同じようには戻らないだろうという声がほとんどです。戻って7〜8割だろう、と。ユーザーは感覚的にも「密」を毛嫌いするでしょうから。

その分、デリバリーやテイクアウト、あるいは半調理された食材を家で調理する需要が拡大していくと思います。その意味で、デリバリーとテイクアウトは、今後飲食店を出店する際の「標準パッケージ」になりつつあります。

さらに言うと、「デリバリー特化型」「テイクアウト特化型」の店舗形態で需要に応えようとしている動きは、既に出てきています。これこそNew Normalの流れ。都心部から始まり、数年で地方に波及していくと見ています。

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「日本人はデリバリーを使わない」が覆った

――「LINE DAY 2020」では、世界各国のフードデリバリー利用状況を発表していました。日本の利用率は先進国の中でかなり低いんですね。

日本は狭い範囲に人口が密集しているから、地理的にはデリバリーをやりやすい環境のはずです。ただ、他国では2〜3年前に始まっていた配送代行モデルが、日本ではあまり普及が進まなかった。単純に海外のプレーヤーが日本で積極展開していなかっただけとも言えますが、昨今有力な外資系フードデリバリーサービスが日本にも入ってきています。数年後には欧米と同じマーケット規模になる可能性が十分にあります。

もうひとつ、日本でデリバリーを利用することには、「料理をサボった」みたいなイメージがつきますよね。共働き家庭であっても「家でちゃんと料理を作るのが偉い」とする文化と言いますか。欧米だと、下ごしらえ済みの冷凍野菜や、半調理済みの食材ばかり売っているスーパーが結構あって当たり前の文化になっています。

そんな中、コロナ禍で日本でも一気にデリバリーが普及しました。出前館の数字を見ても一目瞭然。一気に売上が上がりましたが、緊急事態宣言が解除されたあとも、落ちずにずっと上がり続けている状態です。

毎月の出店数は昨年の5、6倍のまま継続中で、1店舗あたりの売上もキープ。つまり店舗数が増えた分だけ、取扱高が純増しているという状況です。デリバリーが日本人の生活習慣として根付いたんですね。

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技術の力で配送効率を上げ、配送費を下げる

――加盟店が出前館に配送代行を依頼する「シェアリングデリバリー」の取扱高は昨年対比4倍と、大きな伸びを示しています。現在3万5000店の加盟店数を2022年に10万店、配送拠点数を2020年8月の384から1年で540にまで伸ばす目標を掲げていますね。

その目標クリアのためには、配送費の低減がポイントです。出前館がやっているような配送代行は、配送の効率が上がれば上がるほど、ユーザーや加盟店が負担するコストが下がります。コストが下がり普及が進むと、世の中でデリバリーが「日常化」します。我々が進めていきたいのは、まさにこの「日常化」です。

――どのようにして配送費を下げるのでしょうか。

配送員が1時間に配達できる回数を「配送効率」といいますが、いま東京の配送効率は2だと言われています。もし東京の配送員の時給が1500円だとしたら、1回の配送で人件費原価では1回あたり750円ずつかかりますよね。でも、もし配送効率が3になったら、人件費原価は1回あたり500円に下がります。配達効率が3を越している国は世界にいくつかあって、珍しいことではありません。

とはいえ、配送効率を上げるのはとても難しくて、検討すべき要素が多くあります。まずは、一定地域における加盟店の密集度を上げなければなりません。

――つまり、加盟店を増やすことが大事だと。

はい。そしてもうひとつは、ダブルピックアップです。注文が集中すれば、1軒の飲食店から配送員が2つの料理を持って、同じ方向に走っていくこともできます。さらに、配達が終わって戻る際、違う飲食店に寄ってピックアップすることも可能です。

最短ルートやピックアップポイントを割り出すには、マッチングなどのテクノロジーが解決すべきところなので、今まさに、開発に力を入れているところです。

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出前館では食の品質を守る考えから、なるべく最高の状態で届けられる範囲を配達エリアとする

10代20代の外資系サービス、30代からの出前館

――先述の通り、出前館だけでなく、外資系フードデリバリーサービスの利用者も大きく増えました。このような競合他社をどう意識されていますか。

大前提として、プレイヤーが増えればユーザーも加盟店も増えていくので、マーケット拡大の上では、競合企業もパートナーだと思っています。現状はどちらかがシェアを圧倒しているわけでもないですし。ライバルという感覚とも言えますね。

ユーザー観点で言うと、棲み分けができていると思います。注文最低金額を撤廃して一人向けの注文に向いているサービスがある一方で、家族分などの人数が多いと配送料が安くなるシステムを持つサービスもあります。各フードデリバリーサービスの特徴に合わせて、ユーザーがサービスを選んで利用していると思います。

ユーザー層としても、10代・20代が使うサービスと30代からが使うサービスはデータでは綺麗に分かれています。出前館は30代以上のユーザーが多いです。若年層がよく使うサービスは、売り方もスマートでブランド力も強く、若者がデリバリーを使うきっかけをつくっているので、我々も見習わないとですね。

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デリバリー、テイクアウト、イートインを一括管理

――「LINE DAY 2020」で宣言された、「フードマーケティングプラットフォームを目指す」の意味について教えてください。

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デリバリーのみ利用しているけども、その店舗に行ったことがないユーザーも多いと思います。だけど店としてはイートインでも来てほしいし、テイクアウトも活用してほしい。デリバリーのみのユーザーに、テイクアウトやイートインに送客すべくプロモーションすれば効果はあるはずです。

例えば、テイクアウトするユーザーであれば店の場所をわかってるので、イートインの割引券を渡せば、イートインが促進されるはずです。

ただ、デリバリー、テイクアウト、イートインそれぞれの会員基盤を持っているプラットフォームは、我々の知る限り日本にはまだありません。

――それぞれのユーザーが紐付けられていない、と。

最終的には、デリバリー、テイクアウト、イートインを統一したプラットフォームにして、多様な需要を取り込めるようにします。そうすれば、ユーザー側にも加盟店側にもメリットがありますから。

――加盟店側のメリットは、送客以外にありますか?

タブレット問題が解消されます。現状飲食店は、デリバリーとイートインとテイクアウトでタブレットが3枚必要で、デリバリーで配送委託を2社使っていたら、さらに1枚追加されて4枚も置かなきゃいけない。

それを解消すべく、デリバリーとテイクアウトのタブレットを一緒にするシステムの開発を進めています。「LINEポケオ」というテイクアウトの仕組みを出前館に実装します。タブレットが1枚に集約されれば、お店としては助かるはずです。

もうひとつ、これらを統合すれば商品マスターを我々が持つことになるので、加盟店側はメニューの管理が簡単になります。デリバリー、テイクアウト、イートインそれぞれに対し、出すメニューと出さないメニューを決める。テイクアウトはイートインより5%安くするとか、デリバリーは手間がかかるので少し価格に乗せるとか。メニュー管理画面で一括管理できますから、業務が軽減します。

これは出前館がやりたいからというより、加盟店側のニーズがあって考えついた構想です。2017年から3年ほど、加盟店のみなさまと深く向き合ってきたので。

デリバリー業界は「陣取り合戦」の醍醐味がある

――話は変わりますが、LINE DAY2020で採用強化中だとお伝えしていました。出前館の社風や、チャレンジすることの醍醐味についてお伺いしたいです。

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我々は「出前館イズム」と呼んでいるんですが、すごく加盟店を大切にして、配送代行で食の質を守ることに注力する会社です。ただ、競合外資が出てきている状況下、投資規模には彼らと差が生まれつつありました。だから「出前館イズム」の根本的なところは大切にしつつ、LINEの強みであるマーケティング力、開発力、資本といった部分を投入することでシナジーを作り、会社を大きくしていこうと考えています。

今まさに、日本のフードデリバリー市場は、誰が勝ち残るかという戦をしていますが、ビジネスでこれだけ名のある外資と戦うことって、あまりないと思っています。しかも、一度どこかが覇権を握ったら、その先は大きい戦いは起きません。ITで勝ち残るのは、やはり1社か2社なので。マーケットが拡大する中でこの勝ち抜き戦をできるという醍醐味はありますね。

ただ、業界的にはまだ決まりごとが少なく、確立されていないので、やることをカチッとしたい人よりは、グレーな中で自分で物事を作り上げながら自分のキャリアを積みたいチャレンジ精神旺盛な人にお勧めの仕事です。

フードデリバリーって局地戦なんです。アメリカでも、都市によって各社のシェアが違う。もしかしたら日本も今後、「福岡は出前館が強いけど、札幌はどこそこが強い、東京は勢力二分」みたいな状況になりうる。

それは面白さでもあり、戦ったり守ったりを常にやらなきゃいけないという意味では、難しさでもあります。

でも、それも含めて醍醐味です。日本全国60万店舗の飲食店を、名のある競合と取り合って勝負する。まさに陣取り合戦です。

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松永 理沙

PR室で社内広報をしています。2019年よりLINEに入社。スピーチやコピーライティング、PRなどの企業のブランド活動に携わってきました。休日は漫画、ゲームばかりで、長男・夫とインドアに過ごしてます。旅行も好きで、関東と中部圏のロープウェイは制覇しました。ダムも詳しいです。