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男性の育休経験者に聞く!育休を通じた変化と価値観

10月の産後パパ育休の施行や育児休業の分割取得のスタートをきっかけに、LINEでも男性がより育児休業を取得しやすくなるよう、一部社内制度を改正するなどの動きがみられています。日本における男性の育児休業取得率は13.97%なのに対し、LINEの男性社員の育休取得率は50%超(2021年時点)と、社内で男性社員が育休取得している話をよく耳にします。

今回は、直近で育休取得経験のあるLINEの男性社員2名に、育休期間中の過ごし方や育休を通じた変化などを聞いてみました。インタビューに答えてくれるのは、マーケティングソリューションカンパニーでセールス職を務める丸山満と、UIT開発組織でフロントエンドエンジニアを務める折原レオナルド賢です。

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――まずは、お二人の育休取得のタイミングやきっかけについて聞かせてください。

折原

私は今年3月から半年間、育休を取得しました。ちょうど今月10月より職場復帰をしています。元々育休を取得するつもりで、妻とはどのくらいの期間にするかを相談していました。そんなとき、たまたま区役所で男性育休取得を推奨するポスターを見かけまして。そこでは2ヶ月と書いてあったのですが、私はそれよりも思い切って取得したいと思い、半年に決めました。育児休業給付金が減るタイミングも半年だったので、それも目安になりました。

丸山

私は去年10月から年明けまでの約3ヶ月取得しました。今回二人目の子の育休で、上に今年5歳になる長女がいます。実は最初は積極的に育休を取得する予定はなかったのですが、妻と相談する中で取ることを決めました。

――丸山さんは夫婦でどんな話をしたのですか?

丸山

まず「里帰り出産をするのか、しないのか」から始まりました。一人目の子のときは、里帰り出産だったこともあり、慶弔休暇に有給休暇を足して1週間程度の休みだったんですね。でも今回は長女が幼稚園に通っているから、里帰り出産ができないんじゃないかという話になり。長女の面倒を見ながら出産を迎える妻の負担を考えると、しっかり育休をとった方がいいよね、ということになりました。本当は一年間を取得できたらと思ったのですが、変化の早い業界ということもあり流石に一年間は現場を離れられないという判断で3ヶ月にしました。

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――育休を取得すると会社に伝えた時の反応はどうでしたか?

丸山

「家族のサポートの為にもぜひ取ってください」という感じでした。上長も育児経験者なので、育児に対する理解があって、積極的にサポートいただいた印象です。同僚からは、「あれだけ働いていた丸山さんが育休をとる!」と驚かれる声も多く、チームメンバーからは、「ぜひとってきてください!」と後押ししてくれました。育休を数ヶ月取得するのはセールス職でも滅多になく、マネージャー職では初の事例だったので、ファーストペンギンのような役割として、育休取得後は同僚や後輩から育休の相談を受けることも多くなりました。

折原

私のチームも、特に何かハレーションが起きることもなく、「じゃあ引き継ぎをどうしようか」という話になりました。他のチームからヘルプメンバーを数人アサインしてもらい、私自身だけが持っていた固有のタスクは汎用的に使い回せる仕組みを用意して再現性を高めることで解消させました。あと私がやりたくて企画していたタスクは、そのまま触らずに取っておいてもらいました。これが復帰時にすぐ取り掛かれるタスクになり、戻った後も働きやすかったです。

私の周りでも、長期間を休む事例がなかったので、同僚から「育休をとりやすい雰囲気を作ってくれてありがとう」と感謝されました。育休自体はとりやすい環境ではあるのですが、やはり一人分の手が減ることにはなるので申し訳なさがどうしても残ってしまうんですよね。しかもまだ男性側は、育休を取得するのが当たり前というよりは、あくまでも取得する権利があるという印象で......。自身が前例となることで、何かしらのブレイクスルーになれたかなと思います。

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――丸山さんはマネージャー職でもありますが、育休期間はどのようにサポートがあったのでしょうか?

丸山

まず、マネージャーとしての意思決定や現場の責任は上長にサポートとして入ってもらいカバーしてもらいました。でもプレイングマネージャーとしての役割までは上長も十分にサポートに入る事も難しいので、今後マネジメント候補となるチームメンバーに対して権限移譲を行いました。かつ、一つのチームを二つのユニットにわけて、マネジメントの難易度を下げたことも工夫の一つです。

ただ体制を作るだけでなく、各案件の指針となるような資料を作ってチームメンバーに残していきました。何かイシューが発生しても対処できるように、育休3ヶ月の間に起き得そうなこと、困りそうなことを担当案件ごとに「もしこういう事が起きた時にはこういう対応してね、こういう時には誰々を巻き込んでやった方がいいよ」と方針や動き方がわかるようにしました。

――お二人とも期間が長いですが、仕事面で不安だったことはありますか?

丸山

「自分が現場から離れて大丈夫か、売上達成は大丈夫か」などの心配がありました。あとはこの3ヶ月が実質的に仕事のブランクにはなるので今後のキャリアに関する心配も無かったと言えば嘘になります。

3ヶ月の間は大きなトラブルもなく、戻った時も大きく変わったことはありませんでした。案件の状況の変化は濃淡ありましたが、社内の細かい仕様の変更や、他組織のメンバーの役割やミッションが変わっていたりなどはありましたかね。復帰後は、自分のリハビリも必要なくらい感覚を戻さないといけないところは正直あったので、関わりの深いメンバーや同僚と1on1を積極的に入れさせてもらいました。同僚とは休職中に何が起きていたのか、今後どういうミッションや方針に対してフォーカスしていくのかなどを聞いたり、チームメンバーとは具体案件でどういう事があったのかや、私が不在であった中での仕事の中で生まれた心境やマインドの変化を踏まえて今後のキャリアについて会話する機会を作ったり。ただ、復職直後はいわゆる横文字のIT用語がどうしてもスムーズに出てこなくなった時もあり、ブランクを感じた時は少し焦りましたね(笑)。

折原

私も同じように、復帰時にパフォーマンスを出せるか心配だったので、復帰前に趣味のコーディング・プログラミングで頭をならしたりもしました。2つめは私もキャリアの話ですね。変化が速い業界なので、チームメンバーや環境が変わっているかもと気になりましたが、実際にはプロジェクトが進んだことの他に大きな変化はありませんでした。

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折原

一方で、職場よりも、私の内面に大きな変化がありましたね。仕事を振り返る期間にもなって、主観が変わったように思います。例えば、育休前はプロダクトのリリース前に実施するユーザーテストで、企画職の人と同じようにユーザーの反応を見る手法を検討していたのですが、このアプローチに疑問を持つようになっていました。他のチームとはぶつからない開発組織ならではのアプローチをしたいと思い、処理が遅いところや、ユーザーが操作にもたついてるところを見つけようという気持ちに変わりました。

――育児・家事を通じて、なにかしら考え方や価値観に影響があったのかもしれないですね。

育児は夫婦のプロジェクト

――では話題を変え、育休中の過ごし方について教えてください。

折原

第一子ということもあり、「ゆっくり過ごしたいね、長時間を家族と過ごせて嬉しいね」なんて夫婦で気楽に思っていましたが、実際は過酷すぎました(笑)。子どもの夜泣きの対応はもちろん、実際に夜泣きしない時でも、「いつ泣くかわからないし、自分も起きなきゃ」「ちゃんと生きてるかな」と思うと、自然と眠りも浅くなって睡眠不足が毎日続いて。

しかも、夜眠れなくてもその次の日に昼に眠れるとは限らないのですよね。子供の通院をしたり世話もしたりで、どんなに眠くてもやることがある。そんな生活からメンタルまで次第にやられていったので、夫婦間の喧嘩も増えてしまって。喧嘩のたびにどこに認識の違いがあったのかを夫婦で確認して、よく話し合ってました。

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秋葉原のホコ天にて、休日の様子を撮っていただきました

いま思い返すと......本当に地獄のようでしたね(笑)。でもそれ以上に、子どもと過ごせた時間の価値はあったと思います。やっぱり、子供と肌で触れ合う時間がたくさん取れるのが何よりいいですね。共に過ごす時間が増すほどに「ああ、自分の子が可愛いな」と実感も愛着もますます増しました。

――なるほど、コミュニケーションのデバッグを取り除くような(笑)。夫婦の会話のすれ違いを、また話し合いで見つけるのも良いですね。

折原

夫婦ともにエンジニアだからそういう思考に至ったのかもしれませんが(笑)。次また同じことが起こらないためにはどうすればいいかというのはよく話していましたし、どう育児や家事を分担するかの方針も互いの得意不得意を整理しながら話し合って決めました。完全に分担するよりも、転がっているボールは拾いあえるようにすることでサポート体制が組めるようにしました。これは育休期間が終わった今でも、ちょっとしたタイミングでサポートすることができて活かせています。

――まさしく、夫婦でのプロジェクトという感じですね。

折原

そうですね。あとは、エンジニアっぽいことだと、市販のベビー体動センサーアプリを自分のオリジナルに改造したりもしましたね。おむつのセンサーの表示が分かりづらく、ぱっと見で安全かわからなかったので、自分で作り直して連動アプリを実装しました。赤ちゃんの体感温度も分かりやすく見れるようにしています。

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体動センサーをつけた赤ちゃんの体動や体感温度などがわかるようになっている(画像提供:折原さん)

――丸山さんは育休中はどう過ごしましたか? 二人目ということで、どんな変化があったでしょうか?

丸山

元々ほとんどの家事を専業主婦の妻にしてもらっていたこともあって、育休中は生活リズムも変わるし、使う頭も変わるしということで、「ちゃんと家事育児ができるのか、ちゃんと生活できるのか」の心配がありましたが、妻が出産前に細かく作ってくれたスケジュール表がありまして。最初はそれに沿って動くのに必死でしたが、後半にようやく慣れて無事に育休期間をやり遂げることができました(笑)。

お恥ずかしい話ではあるのですが、育休中は妻に1日のスケジュールを敷いてもらって、ただひたすらにスケジュール表通りに動いていましたね。どの曜日は長女を習い事に連れて行くとか、その時の持ち物が何だとか、何曜日の午前中はどこの掃除をするとか、幼稚園に迎えに行った後は流れで近くの子どもたちとどこで遊んだり。あとは家訓じゃないですけど、育児方針に関する大事なマインドについても常日頃から忘れないように書いてくれていました。最初は体が慣れていなかったこともあり、毎日疲労困憊でしたが、1ヶ月も経つとだんだん慣れていきましたね(笑)。

特に育休を取って一番よかったなと思うことは、長女のメンタルケアができたことです。育休を取る前はあまり想定していなかったのですが、いざ二人目が生まれると、ママの時間が二人目の子に取られてしまうことに精神的ストレスを感じてしまったようで、態度や言動にも変化が見られて。出来る限りパパである自分が生まれた子の方を抱っこしたりして、ママにできるだけ長女を見てもらうような分担を意識するようにしました。

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丸山家の姉妹の写真をいただきました。(カメラマン:丸山さん)

これをきっかけに「長女の気持ちを第一に考えよう」という育児方針を夫婦で決めて、長女に「大好きだよ、目を向けているよ」と多少オーバーに見せるようにしていました。あとは、これまで妻に家事育児を任せっぱなしにしていたので、その大変さも再認識できて、ますます感謝の気持ちも深まりました。この一緒にいる期間が互いの理解を深める一つのきっかけになったかなと思います。

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――では、ズバリ、育休の時間を一言で表すと、どんな時間でしたか?

折原

「人生の中で、稀有で貴重な体験」だと思います。うまく綺麗に表現できないけれど......でも、自分にとっては初めてのことでしたし、人生にひょっとしたら1~2回の経験かもしれないですよね。

丸山

私も似たコメントになりますが、家族4人でこんなに長く過ごせる期間は最初で最後になると思うんですよね。もし次に育休を取るとしたらですが、家族は5人になっていますし、将来仕事をリタイアする頃には、子どもたちは家を出て独立している可能性が高いですよね。だから、この3ヶ月は家族4人での思い出作りにもなったし、臭い話ですが(笑)、毎日同じ空間と時を過ごせてよかったなと思います。

――最後に、育休を取るか悩んでいる方に一言お願いします。男性が育休取ることの意味、どう思いますか?

丸山

妻の言葉を借りるなら「自分の子じゃん!」と(笑)。自分の子だから育てるのは当たり前で、育休を取得するのは当たり前の時代になるといいですよね。取得するかどうか悩むんだったら、取得する上で、どうやりくりするかを考えるのがいいかもしれないです。幸い私の場合がそうでしたが、育休を取得する事を上司に相談をした時に、上司が積極的に育休取得を奨励するような組織文化を作っていくことも重要なのかなと思いました。

折原

育児とプロダクトづくりって似ていると思うことが多いんですよね。自分の新たなプロダクトを持つような気持ちで、ぜひ仕事と同じか、またはそれ以上の熱量で取り組めたら楽しいんじゃないかなと思います!

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松永 理沙

PR室で社内広報をしています。2019年よりLINEに入社。スピーチやコピーライティング、PRなどの企業のブランド活動に携わってきました。休日は漫画、ゲームばかりで、長男・夫とインドアに過ごしてます。旅行も好きで、関東と中部圏のロープウェイは制覇しました。ダムも詳しいです。